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武豊も期待の昨年、唯一の海外重賞勝ちをした日本馬や『こじはる』命名モンドシャルナの現在は?

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
昨年のメシドール賞を武豊で制したジェニアルはその後、フランスに転厩した

メシドール賞を優勝したジェニアルの現在

 パリの北約42キロにある街シャンティイ。広大な馬の調教場や競馬場がある事で知られるこの閑静な馬の街で厩舎を開業する日本人調教師が2人いる。

 1人は小林智。1974年7月20日、千葉県船橋市出身の44歳。日本での牧場勤務を経て2001年からはフランスでホースマンとして活躍。08年には日本人として初めてフランスで調教師免許を取得。開業するに至った。

 その後は凱旋門賞を目指す日本馬に馬房を貸与する他、様々な面でサポートをした。2年連続で同レースを2着したオルフェーヴルも、小林による助けは大きかった。

ジェニアルと現在管理している小林智調教師
ジェニアルと現在管理している小林智調教師

 そんな中、昨年は松永幹夫厩舎に所属していたジェニアルとラルクを受け入れた。両頭は共にフランスで出走するために現地入りしたのだ。

 2頭は共に7月22日、メゾンラフィット競馬場で初戦を迎える。どちらも武豊騎手が日本から現地へ駆けつけて騎乗。ラルクは残念ながら結果を残せなかったが、ジェニアルはメシドール賞(G3)を見事に優勝。海外で自身初の重賞制覇を成し遂げた。結果的にこの勝利が昨年、日本馬が海外で制した唯一の国際重賞勝ち(他にパート3国の韓国ではあり)となった。

 2頭はいずれもその後、現地で更に2戦した。残念ながら勝利する事は出来ず、その後、小林厩舎へと転厩。現地の馬になった。

 ラルクは繁殖に上がったがジェニアルは現役を続行。12月には一旦、放牧に出された。帰厩後は調教でなかなか動かず。体調を崩した事もあり、ひとまず休ませてから再仕上げ。5月1日のミュゲ賞を目指した。しかし、追い切りの動きが今一つでここを回避。改めて仕上げ直される事になった。

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 「年齢的な成長もあってか以前みたいにモタれる事はなくなってきました。実力はある馬なので、また武豊さんに乗ってもらえるよう今一度しっかり仕上げていきたいです」

 これを受けて武豊も次のように語る。

 「日本の競馬との兼ね合いもあるけど、可能なら乗りに行きたいです」

 昨年のメシドール賞の再現が待っている事を願いたい。

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こじはる命名モンドシャルナの現在

 元AKBの小嶋陽菜さんが命名した事で話題となったモンドシャルナ。現在8歳となったこの牡馬は、ジェニアル同様、フランスのシャンティイで調教されている。

 現在、管理しているのはかの地で日本人としては2人目となる調教師試験に合格した清水裕夫だ。

モンドシャルナと現在管理している清水裕夫調教師
モンドシャルナと現在管理している清水裕夫調教師

 1981年10月31日、千葉県柏市出身の37歳。ダンスパートナーがフランスへ遠征しノネット賞で2着に善戦した頃に競馬を見始めたと語る彼は、進学校で有名な開成高校の卒業生。競馬ファンから牧場勤務を経て一度フランスへ。その後、オーストラリアやイギリスへ行った後、現在のフランスへ戻った。

 一昨年の2017年にかの地で受けた調教師試験。一次を史上2人目となる満点突破を果たすと、50点で合格という二次試験では90点を獲得。先述した通り小林に次ぐフランス競馬史上2人目の日本人調教師が誕生した。

 一方、モンドシャルナは13年10月に京都競馬場、芝2000メートルの新馬戦を快勝してデビュー。18年4月まで計35戦して3勝。最後は1000万条件の身でフランスへ運ばれた。

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 フランスの初戦は18年9月。海外デビュー戦をいきなり2着と好走したが、その後の5戦は3着が1度あるだけ。移籍後はこれで6戦して未勝利、2着1回、3着1回となっている。

 「調教だと引っ掛かるのに競馬へ行くと途中で走るのをやめてしまうんです」

 清水はそう語る。4月15日のメゾンラフィット競馬場では15着と大敗。その後はシャンティイ近くの牧場へ放牧に出されたがすでに帰厩。次に使うレースを模索中だ。

 「中央のレースだけではなく今後はアマチュア戦も含めて選択肢を広げて使う場所を考えていきたいです」

 フランスに来た当初と比べるとだいぶがっちりとした体型になってきたと言う。途中でやめてしまうという精神面のせいかなかなか好成績を残せないでいるが、そろそろ『こじはる』に、そして日本のファンに朗報が届く事を期待したい。

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(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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