畑に木が生えている、植えることのメリット
『無肥料栽培』=『養分が要らない』というわけではない
自然農では外部からの資材投入をせずに土を豊かにしていくのが原則とされます。
それが『無肥料』という言葉に表されているのですが、これは決して
『肥料=養分が要らない』というわけではありません。
(意味としては不施肥という方が適切です。)
時々この辺りを勘違い…というか極端な考え方になっていて『肥料=悪いもの』と思ってさえいる方をお見受けします。
実際、肥料分が無い土で育てるとどうなるか?というのは昨年のプランター栽培比較でよくわかりました。
その様子は↓こちらの動画で紹介しています。
この比較実験でもはっきりしたのが、
植物は肥料(養分)がなければ死にはしないけれど生長もせず老化していく
という結果でした。
ではなぜ『無肥料(不施肥)』でも育つのかと言えば、それは人工的な養分供給(施肥)が無くとも土や自然界には自ら養分を作り出す『循環』システムがあるからです。
自然界の物質循環によって土は自然に豊かになっていく
土には色んな微生物や生き物が住んでいて、彼らがいるから土は植物が生長するのに必要な養分を作り出してくれる。その循環システムを活性化させたり促進させる、あるいは多様化させることで土を豊かにする。
その手助けをするのが農業の本来の在り方で、持続的な食糧生産だと思います。
その循環促進の手助けとして、化学合成肥料が普及する前の日本では、山の落ち葉を集めてきて堆肥を作り畑に入れていました。
それを畑の中でやるのが今回のテーマです。
おおよそのことはこちらの動画↑で話した通りなので、ここからは動画の簡単なまとめと話しそびれたことを書いていきます。
【畑に木が生えている、果樹を植えるメリット】
①落ち葉という有機資材が無料で手に入る
②果樹を植えていれば食べ物が手に入る
③隣地と離れていて、果樹の品質や収量を気にしなければほぼ手入れが要らない
④鳥や虫や小動物の休憩場、餌場、住処になるので生き物の数と多様性が増える
↑この4つともに動画でもお伝えしましたが、それぞれについて書いてみます。特に④は動画内ではお話し忘れた内容です。
①落ち葉という有機資材が無料で手に入る
そのままです笑
落ち葉はとても使い勝手の良い有機質資材です。
何が良いかって、草のように刈る必要も無いし、水やりや種まきをしなくても毎年自動で落ち葉を生産してくれる。それを集めるだけで良いし、そのまま放っておけば落ち葉堆肥がゆっくりとですが出来上がっていきます。これをホームセンターで買うと1袋15ℓで300円くらいしますからね。
どの木でも分解されれば良い感じの腐葉土になると思いますが、樹種によって葉っぱの性質も変わるので、なるべく良い腐葉土がほしい…しかも果実も食べたいとなるとお勧めは『栗』かな。栗の木は落葉樹で葉っぱも比較的柔らかくて分解されやすいです。
それに対して柑橘類や樫などの常緑広葉樹の葉っぱは固めで分解されにくいです。
杉や檜の葉も油分を沢山含んでいて分解されにくいので腐葉土にするにはちょっと不向き…というか時間が掛かります。
②果樹を植えていれば食べ物も手に入る
これもそのままですねw
野菜同様、無農薬無肥料、ましてやほったらかしでは果樹栽培はできないんじゃないか?
とも思われていそうですが、そんなことはありません。
人間の手助けがあって果実が実ったり美味しく出来る品種というものは沢山生み出されて、現在の市場流通ではそちらが中心ですが、昔からある古い品種や果樹の種類によっては無農薬無肥料でも毎年たわわに実をつけてくれます。
梨や品種改良されたリンゴあサクランボなんかは難しそうですが、柑橘類全般、ビワ、栗、梅、桑、柿、イチジク、銀杏などなど。散歩やドライブしていると案外、勝手に実って食べられずに地面に落ちてる果樹もけっこうありますのでそういうのを参考にしてみるといいかもです。
③果樹の品質や収量を気にしなければほぼ手入れが要らない
これもそのままなのですが(ぜんぶそのままですね)、②でも述べたように、自活できる果樹はけっこう多いです。それを美味しくしたいとか、沢山実らせたいとか、収穫し易い高さにしたいとかがあると、それらを実現するための手入れは必要になりますが、最低限の手入れで太陽光が当たるように草刈りや周りの木を切ってあげればあとは殆ど手入れ無しで収穫できます。
ただし、伸ばしっぱなしだと隣地の方に枝を伸ばしてしまったり、収穫しにくい出来ないくらいの高さにまで伸びてしまったりするので、定期的な剪定は行った方がいいかなと思います。落ち葉も畑に生えてるならいいけど、庭に生えてると落ち葉かきもしなくちゃならないですね。
④鳥や虫や小動物の休憩場、餌場、住処になるので生き物の数と多様性が増える
木は野菜や草よりも大きく環境を変えます。地上部も地下部にも草本に比べて広く伸びるし、長い年月そこに在り続けます。環境的な変化、多様性があるとそこに住まう生き物たちにも多様性が生まれます。
木の実が鳥や虫、小動物の餌になり、羽を休める場所にもなるしウロ(木の幹にできた穴)があればそこに巣を作る生き物もいます。
根っこの部分にはたくさんの蝉の幼虫がくっついて生息していたりします(以前、以来された仕事で直径50cmくらいの切り株を撤去するために掘り出していたら30匹以上出て来ました。他の木の根元にできる限り移動して埋めておいたけど、生き延びられたかな…)
そうして動物たちが集まってくればそこで糞をしたり、死んだら亡骸が土の養分になり蓄えられていきます。この生き物を増やすほどに土が豊かになっていくという考え方が自然農をする上でのポイントです。
現代の慣行農法では、畑には栽培する野菜以外は一切生やさず、土も薬剤で殺菌殺虫して毎回耕すという、生き物を増やすのとは真逆のことをしています。だから肥料や堆肥を投入しなくてはいけなくなるのだと思います。
というように色々とメリットを述べて参りましたが、撤去するのは大変だし、育つのにも時間がかかります。それでも長いスパンでその土地をデザインしていくなら樹木は是非取り入れて作っていくのがよいと思いますし、既に生えているならそれらをなるべく活かすようにデザインするのも面白いと思います。