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2024年に反響が大きかった10の事件、その後どうなった?(上)

前田恒彦元特捜部主任検事
辰年も悲しい事件や事故が相次ぎました。巳年は安らかな1年になるといいですね。(提供:イメージマート)

 2024年にヤフー・ニュースで配信した拙稿のうち、閲覧数が多く反響の大きかった順に10の記事を取り上げ、1年の動きやその後の状況について振り返ってみました。

【第1位】

 2024年の拙稿で最も読まれたのは、性犯罪者に対して日本とは比較にならないほどの厳罰を科し、むち打ち刑まであるシンガポールの刑事裁判に関する記事でした。それだけ日本の刑罰が軽すぎると感じている人が多く、社会の関心も高いということでしょう。現にネット上では、日本でも性犯罪者、特に幼児や児童に対する性犯罪者にむち打ち刑を科すべきだといった声が上がりました。

 確かに、日本も大宝律令や養老律令の時代からむち打ち刑が刑罰として定められており、以後、連綿と続けられてきた歴史があります。江戸時代には軽微な窃盗犯に敲(たたき)と呼ばれるむち打ち刑が科され、公開処刑によって肩や背中、尻を50回とか100回ほどたたかれていました。時代劇で出てくる「100たたきの刑」がまさにこのことです。

 その狙いは、受刑者を裸にして大衆の目にさらし、肉体的苦痛と精神的苦痛を同時に与えることで、二度と再犯に及ばないようにしようというものでした。しかし、明治の文明開化に伴って野蛮だという批判の声が上がり、1873年に法令上は廃止されました。それでも地方都市などを中心に懲役刑の代替として事実上続けられてきましたが、旧刑法が施行された1882年に完全に廃止され、現在に至っています。

 しかも、いまの憲法は「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」と規定しています。最高裁の判例によると、「残虐な刑罰」とは「不必要な精神的、肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰」を意味するので、現在ではむち打ち刑はNGということになります。

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15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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