なぜハーランドはシティ移籍を決めたのか?レアル、バルサ、パリSG、バイエルン...争奪戦の決着。
移籍決定の瞬間が、訪れた。
近年、移籍市場が開くたびに、世間を賑わせてきたのがアーリング・ハーランドの去就だ。ハーランドはボルシア・ドルトムント加入後、88試合に出場して85得点をマークしている。
ドルトムントに所属する大型ストライカーに、レアル・マドリー、バルセロナ、バイエルン・ミュンヘン、パリ・サンジェルマンと複数クラブが関心を示していた。だが、ここに来て、事態が動いた。マンチェスター・シティがハーランドを確保したのだ。
■ケイン獲得の失敗
シティは今夏、ハリー・ケインの獲得を検討していた。だがトッテナムがケインの移籍を簡単には認めず、最終的には獲得を断念した。
セルヒオ・アグエロの退団があり、ストライカータイプの選手はガブリエウ・ジェズスのみになった。フィル・フォーデン、ラヒーム・スターリング、ベルナルド・シウバらが、ペップ・グアルディオラ監督の下でゼロトップのポジションに据えられた。
シティはプレミアリーグでリヴァプールとデッドヒートを繰り広げながら首位をキープしている。しかしながら、チャンピオンズリーグではレアル・マドリーに敗れてベスト4敗退が決まった。念願のビッグイヤーを、と考えるならやはり決定力のあるストライカーが必要だった。
ハーランドの契約解除金は7500万ユーロ(約101億円)だとされている。“国家クラブ”であるシティとしては、問題なく支払える額だろう。ハーランドの父親は、現役時代に2000年から2003年までシティでプレーした過去がある。そういった背景も、ハーランドの移籍を後押ししている。
「ハーランドの(移籍の)話が前進しても驚きはない。契約解除金があり、契約の上ではそれを尊重する。高いレベルでタスクをこなせる選手が必要だ。我々がコンペティティブであるために。現代フットボールで、リズムは重要だが、同様にフィジカルも必要なんだ」とはドルトムントでスポーツディレクターを務めるセバスティアン・ケールの言葉だ。
「もう一つ、言えるのは、我々が次のシーズンを(マルコ・)ローゼ監督と一緒に考えているということだ。どのような準備をするかを話し合っている。来シーズン、より良いシーズンを送れるように願っている」
■ビッグクラブの算段
一方、シティ以外のクラブの動きはどうだったか。マドリーは、キリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)をトップターゲットにしてきた。エムバペとハーランドの“両獲り”の可能性が取り沙汰されてきたが、フロレンティーノ・ペレス会長の狙いはあくまでエムバペで、彼の確保が優先事項となっている。
バルセロナはストライカーを探している。ロベルト・レヴァンドフスキ(バイエルン)、ダルウィン・ヌニェス(ベンフィカ)、度々ストライカーの名前が補強候補に挙げられてきた。だが、冬にラ・リーガが発表したサラリーキャップで、―1億4400万ユーロ(約194億円)と唯一のマイナスの数字を出していたバルセロナにとって、3000万ユーロ(約41億円)に達するといわれるハーランドの年俸を支払うのは困難だ。
バイエルンとパリSGに関しては、レヴァンドフスキとエムバペの移籍に拠(よ)るところがある。レヴァンドフスキやエムバペが移籍を決意した場合、代役のCFの選手が必要になるからだ。ただ、現状、この2人の去就は不透明で、その間にシティが先んじた格好である。
「シティはFWを獲得する必要がある。疑いの余地はないよ。CFがいない中でも、ファンタスティックなプレーをしていると、あなた方(報道陣)は言うかもしれない。だが、それは我々が勝っているからだ。我々が負け始めたら、ストライカーを獲得するべきだという声は高まるだろう。私が反対の考えをしたとすれば、あまりにウブだと思う」
これはグアルディオラ監督のコメントだ。
今季のプレミアリーグで、シティは35試合で89得点を記録している。リヴァプール(87得点)、チェルシー(70得点)、アーセナル(56得点)、トッテナム(60得点)と得点力は頭抜けている。
だがグアルディオラ監督が語るように、ストライカーが必要なのは確かだ。そのラストピースとして、ハーランドが嵌ろうとしている。