自分の資産・貯蓄に満足している人は全体では3割近く、高齢者は満足度高し(2024年公開版)
将来のため、保険的な意味で、何か目的を果たすため、人は蓄財をする。その蓄財の実情にどれほどの人が満足しているのだろうか。内閣府が2024年3月に発表した定点観測調査「国民生活に関する世論調査」(※)の結果から確認する。
現在の生活において、資産や貯蓄の面で回答者自身がどれほど満足しているかを聞いたところ、全体では満足している4.2%・やや満足している23.4%となり、合わせて27.6%が「満足派」との結果となった。
逆に明確な不満を持つ人は32.7%、やや不満が39.2%となり、合わせて71.9%が「不満足派」。「満足派」と比べて44.3%ポイントもの開きを見せている。男女別ではやや女性の方が「満足派」が多いものの、その差異は0.4%ポイント。ほぼ誤差の範囲。
属性別の差異がはっきりと見られるのは、むしろ年齢階層別。
年齢階層別では30代で明確な不満の値が最大となる。40代もほぼ同値。これは多分に世帯を抱え、子供の養育費や住宅ローンの重圧により、首が回らない状態にあるからだと思われる(今件は生活全般ではなく、あくまでも資産・貯蓄に限定した満足度であることに注意)。50代に入ってようやく子供の養育費や住宅ローンから解放され始め、60代に入ると退職金などでまとまったお金が手に入り、資産・貯蓄の面で満足している人が増えてくると考えれば道理は通る。
もっとも70歳以上になれば(大抵の場合は)消費する金額の方が多いので、現時点での資産・貯蓄の満足度は60代と比べて減ってもおかしくはない。ところがむしろ満足度が増えているのは、この年齢における退職金の額が現在の相場よりも大きかったことや、金銭に対する価値観の世代間での違いなどに起因しているものと思われる。また、自らが消費する金額が小さくなり、所有する資産・貯蓄との比較の点で、より大きく思える点もあろう。今件はあくまでも回答者の心境に基づくものであり、同じ金額でも個々の価値観によって判断・回答は異なることに注意しなければならない。
ちなみに全体としての「満足度」の経年変化に関しては、大きな動きは無かった。「満足派」4割前後、「不満足派」5割強から6割程度のラインを行き来していた。要は資産・貯蓄の上での現在の生活の満足度合いに大きな変化は無かった。
ところが2021年で大きな変化が生じている。これは新型コロナウイルス感染症への対策のため、過去の調査と比べると調査方法や設問様式に違いがあるのが一因だが、同じスタイルの2022年以降も継続して前年比で満足派の増加・不満足派の減少が生じていることから、単純なスタイル変更によるものだけが原因とは考えにくい。むしろ新型コロナウイルス感染症で生じた経済環境の変化が、資産・貯蓄の上での現在の生活の満足度にも大きな影響を与えたと見なしてよいのだろう。
■関連記事:
【高齢者の7割強は「子の世話無しでいいから、財産は自分で使い切る」】
【「高齢世帯ほどお金持ち」は当然?…世帯主の年齢階層別貯蓄額推移(高齢社会白書)(最新)】
※国民生活に関する世論調査
直近分は2023年11月9日から12月17日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を持つ人の中から層化2段階無作為抽出法で5000人を選んだ上で、郵送法によって行われたもので、有効回答数は3076人。回答者の男女比は1440人対1636人、年齢階層別構成比は18-29歳298人・30代352人・40代489人・50代584人・60代579人・70歳以上774人。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。