『銀魂』の神楽は、弾丸を歯で噛んで止めた! どんな反射神経ならできるのか?
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。さて、今回の研究レポートは……。
ワタクシ、『銀魂』の神楽が大好きです。
万事屋の紅一点で、身長155cm、体重40kgの小柄な美少女。でもそれは見た目であって、実は大食いで、毒舌で、自己中で、態度がデカくて、下ネタも全然アリ。そのうえ、宇宙最強の戦闘部族・夜兎族の生まれなので、体は頑丈だし、メチャクチャ強い。ヒロインのイメージを覆した超ヒロインなのである。
そんな神楽は、どれほど強いのか?
たとえばアニメの第一話では、ジャンプしてパンチを振り下ろし、巨大な岩を真っ二つに叩き割った。
画面で測ると、岩の直径は3.3mほどもあり、すると重さは推定52t。空手の達人は、正拳突きでレンガも割れるというが、神楽が岩に生じさせた割れ目の面積はレンガの1500倍くらい。つまり彼女のパンチ力は空手達人の1500倍で、正拳突きの衝撃力が600kgなら、神楽パンチは900tだ!
こんなのでぶん殴られたら、体重75kgの筆者は、48m彼方まで飛んでいきます。皆さん、さようなら~。
などと別れを告げている場合ではなく、これだけでも充分すごいけど、もっと注目したいエピソードがある。
それは、二丁拳銃の来島また子と戦ったとき。また子が撃った拳銃の弾丸を、神楽は歯で噛んで止めたのだ。あまりにもオドロキの行為だが、どうすればそんなことができるのだろうか?
◆人の2千倍ほど俊敏だ!
神楽がこの離れ業をやってのけたのは、アニメ第61話「闇夜の虫は光に集う」において。
来島また子の連射を素早い動きでかわした神楽は、高くジャンプする。と、また子は「かかった! 空中では自由も利くまい!」と、ドンドンドンと銃弾3発を速射した。
全弾命中……と思われたが、なんと神楽はそのうち2発を両手の指で挟んで止め、もう1発を歯で噛んで受け止めていた。ニッと笑う神楽……!
銃弾を歯で噛んで受け止めるとは、ちょっと信じがたい行為である。
気管支へ入ったりすると危険なので、絶対に試みないでほしいが、ピーナッツを投げ上げて口で受けるのをやった人も多いだろう。
これ、口で受け止めるだけでも意外と難しく、ましてや歯で噛んで止めるのは至難だ。高さ1mまで投げ上げたピーナッツは、秒速4.4m(時速15.9km)で口に飛び込むが、口の動きはこのスピードにすら対応できないのである。
それに対して、拳銃の弾丸の速度は秒速200~600m。中間の秒速400m(時速1440km)としても、速度は90倍だ。
そんなすごいスピードの弾丸を噛んで止めようと思ったら、銃弾が歯のあいだを通過する瞬間、過たず歯を閉じなければならない。
わずかでも遅いと、喉の裏側にある延髄や小脳を撃ち抜かれてしまい、閉じるのが早すぎても歯を砕かれた後、同じ運命が待っている。
銃弾を噛み止めるのに必要な反射神経は、どれほどか?
銃弾の長さを2cmとすると、歯の間を通過する時間は0.00005秒。人間が刺激に反応するまでの時間は、最短でも0.1秒といわれるから、これができる神楽は、常人の2千倍も俊敏なのである。
◆噛めばよいわけではない!
しかも、俊敏さがあればよい、というものではない。神楽は噛むことによって、弾丸の勢いを止めなければならず、それには力が要る。
車が止まるのに制動距離を要するように、運動する物体を停止させるには、一定の距離が必要だ。距離が短いほど大きな力が必要だが、このたび許される距離は、最長でも弾丸の長さと同じ2cm程度である。
この短い距離で秒速400mの物体を止める力とは、物体の重量の40万倍。拳銃の弾丸は10g前後だから、必要なブレーキ力は4tだ。
これは大変である。神楽が銃弾に4tの力を与えたということは、作用反作用の法則で、銃弾も神楽に4tの力を与えたはず。すなわち彼女の頭部は、4tのパンチを食らったのと同じ衝撃を受ける。
いくら夜兎族でも、これに耐えて「ニッ」と笑った神楽はすごい。脳の耐衝撃力も並ではない。
そして、ここからが一層すごい話なのだが、弾丸に4tのブレーキ力を与えた神楽の咬筋力は、もっと強かったと思われる。ブレーキ力4tというのは、歯と銃弾のあいだに働く摩擦力であり、これを「噛む」ことによって生み出すには、その3.3倍の力が必要なのだ。つまり、神楽の噛む力は13t!
これはオソロシイ。神楽は、車だろうが大理石だろうが、バリバリ齧り切ってしまえる!
しかし、それほどのすごい力で盛大に噛んでしまうと、たぶんマズイことになる。
銃の弾丸は鉛でできており、鉛はそう頑丈な金属ではない。銃弾の直径を1cmとすれば、この太さの鉛は、わずか240kgの力で破断する。
そんなヤワい金属を13tもの力で噛んでしまったら? 銃弾はプリンのように噛みちぎられて、破片が口のなかを時速1440kmで飛んでいくだろう。むえ~~っ。
そうならないためには、神楽は銃弾に歯を食い込ませつつ、しかし嚙みちぎらないように力を加減したに違いない。
驚異的な俊敏さと、すごい咬筋力と、オドロキの対衝撃力と、絶妙な力のコントロールを同時に発揮することなんてできるのか……と心配になるが、冒頭で記したように、神楽は「見た目は美少女でありながら、大食いで、毒舌で、自己中で、態度がデカくて、下ネタも全然アリで、そのうえメチャクチャ強い」という、すごい要素をたくさん兼ね備えた超ヒロインなのだ。彼女だったらできるかも……!