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北朝鮮のICBM発射に日本よりも大騒ぎの韓国! 各メディアはどう報じたか?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
北朝鮮が3月24日に発射したICBM「火星17号」(労働新聞から)

 昨日(24日)、北朝鮮が発射したICBM(大陸間弾道ミサイル)は約71分間、約1100km飛行し、北海道渡島半島の西方沖約150kmの日本の排他的経済水域(EEZ)内の日本海に落下した。

 速報が流れ、鬼木防衛副大臣が緊急会見し、「一連の北朝鮮の行動は、我が国・地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものだ」と、北朝鮮を強く非難し、また「G7」首脳会議出席のため外遊中の岸田文雄首相も「許せない暴挙であり、断固として非難する」との談話を出していた。少しでもズレれば、北海道に着弾したかもしれないので日本にとっては北朝鮮のICBM発射は軽視できない、深刻な問題である。

 北朝鮮のICBMの発射は韓国のEEZ内に落ちたわけでもないが、ICBMが同盟国の米国を標的にしているだけに、それも「レッドラインを越えるな」との再三の警告を無視しての発射だけに韓国もまた、日本以上に大騒ぎだった。

 午後に合同参謀本部が北朝鮮のミサイル発射を伝え、それが新型のICBMだとわかると、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は国家安全保障会議(NSC)を緊急招集していた。

 北朝鮮は今年すでに11回もミサイルを発射していたが、NSCを招集しても文大統領が自ら出席するケースはそう多くはない。まして、北朝鮮への配慮か、南北対話再開への未練なのか、「挑発だ」と北朝鮮を批判することは一度もなかった。しかし、昨日は様子が違った。

 引きつった表情の文大統領は金正恩(キム・ジョンウン)総書記が国際社会と約束したICBM発射のモラトリアム(一時停止)を「自ら破棄した」と憤慨した。さらに「国際社会に対して深刻な脅威を与えただけでなく、国連安全保障理事会の決議に明確に違反する行為である」と述べ、北朝鮮を激しく非難していた。

 韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領も文大統領に負けまいと、政権引き継ぎ委員会を通じて北朝鮮のICBM発射を「重大な挑発」と規定し、国連安保理に対して速やかに緊急会議を招集し、北朝鮮に対して厳重な措置を取るよう促した。

 韓国軍もまた、北朝鮮のミサイル発射時にいつでも発射地点と主要施設を精密打撃できることを示すため地対地ミサイルの「玄武2」と戦術誘導ミサイル「ATACMS」、艦対地ミサイル「海星2」をそれぞれ1発、さらには精密誘導爆弾(JDAM)2発を発射し、北朝鮮を威嚇してみせた。韓国軍のこうしたデモンストレーションは北朝鮮の核実験とミサイル発射で軍事的緊張が高まっていた2017年以来のことである。

 韓国のメディアもこぞって北朝鮮のICBM発射を速報で流していた。テレビのニューステロップをみると、見出しはほとんど同じだった。

「KBS」「4年4か月ぶりにICBM高角発射 モラトリアム宣言を破棄」

「MBC」「結局は北が新型ICBM発射 4年4か月ぶり」

「YTN」「北が4年ぶりにICBM発射 6200km以上上昇」

「TBS」「日本防衛相『射程距離5500kmを超えるICBM級』」

「OBS」「北が新型ミサイル発射 軍が原点打撃訓練を断行」

「JTBC」「北がICBM発射挑発 結局『レッドライン』を越えた」

「Aチャンネル」「米全域が射程圏 4年ぶりに『怪物ICBM』を発射」

「NEWS1」「北のICBMはより強力 『核との結合』は時間の問題」

「TV朝鮮」「合同参謀本部『北ミサイルICBM級と推定 高度6200km』」

「SBS」「全世界に見せびらかすかのように・・・北朝鮮が約束通り『レッドライン』を越える」 

 「聯合ニュースTV」「北がICBM発射 軍がミサイル5発で対抗」

 また、新聞各紙のデジタル版も以下のような見出しを付けて、それぞれ速報を流していた。

「朝鮮日報」「金正恩レッドラインを越えた 『怪物ICBM米本土射程圏』」   

「東亜日報」「レッドラインを越えた金正恩  米全土を打撃できるICBMを発射」

「中央日報」「ワシントンもICBMの射程圏  金正恩レッドラインを越えた」

「韓国日報」「レッドラインを越えた 4年4か月ぶりにICBM挑発再開」

「京郷新聞」「軍が北のICBM発射に『玄武2ミサイル』など実射で対応」

「ソウル新聞」「線を越えた金正恩 ICBM挑発」

「ソウル経済」「金正恩のICBM挑発 結局レッドラインを越えた」

「毎日経済」「北がICBM発射 尹出帆を前に安保試験台に」

「ハンギョレ」「北が米全域打撃可能なICBM発射 『強対強』対峙に回帰するのか」

「オーマイニュース」「北のICBM発射に『政府声明』 モラトリアム破棄を強力糾弾」

 このうち「東亜日報」、「中央日報」、「韓国日報」、「京郷新聞」、「ソウル新聞」、「ソウル経済」がこの問題を社説で取り上げていた。「韓国日報」と「ソウル経済」を除く、各紙の社説の主張を簡単に紹介すると、以下のような内容である。

 ▲「東亜日報」(「ついに『怪物ICBM』で挑発した北 5年前とは違った懲罰を覚悟せよ」)

 「北朝鮮は今回も5年前と同様に極限の対決局面後に劇的な協商局面に転換させ、何か補償を得ようと計算しているのかもしれない。しかし、それは錯覚だ。金正恩が相手にする尹錫悦当選者もバイデン大統領も5年前の米韓首脳とは違う。国連制裁と言葉の爆弾が行き交い、交渉に転換したその時とは異なり、北の不法妄動を座視しなければ、補償策を出すこともない。過去の脚本を繰り返すようなことをすれば、北朝鮮は孤立と封鎖の中で枯死という結末を避けられないだろう」

▲「中央日報」(「米本土打撃ICBMでついにレッドラインを越えた北」)

 「ウクライナ事態の対応で米国に余力がなく、西欧と中露の対決激化で、北朝鮮への国際社会の一致した対応が困難な点が気掛かりだ。しかし、北朝鮮が望むような状況にはならないであろう。(韓国の)新政権下で米韓協力は一層強固となるであろうし、国際社会でもプーチンの侵攻を機に民主主義国家間の連帯と力が一層強まっている。このことを北朝鮮は知るべきだ。これ以上、状況を悪化させないよう北朝鮮に強く求める」

 ▲「京郷新聞」(「ICBM発射でモラトリアムを破棄した北を強烈に糾弾する」)

 「北は今年に入って11回もミサイル、放射砲を発射し、ついにはICBMまで発射し、米韓が設定したレッドラインを脅かした。朝鮮半島の緊張を急速に高めた北朝鮮の挑発を痛烈に糾弾する。北朝鮮がモラトリアムを破ったのは米国に向け対話に出て来いとの意味のようだが、核とミサイルの挑発は究極的な解決策とはならない」

▲「ソウル新聞」(「ICBM発射で結局レッドラインを越えた北」)

「文在寅大統領はNSCを主催し、国連安保理決議に違反したICBM発射を強力に糾弾していた。しかし、我が政府の対応が遺憾の表明で済ませば、北朝鮮に嘲笑われるだけだ。北朝鮮が誤判しないよう最高度の警告と行動が伴わなければならない」

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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