健康だけでなく人権も損なわれる?安楽投手の不遇
今秋のドラフトの目玉である(あった?)済美高の安楽智大投手(愛媛)が「第10会BFA U18野球選手権」のメンバー選出から漏れた。その理由が問題だ。所属チームが不祥事(下級生へのいじめ)により、対外試合禁止処分を受ける見通しであるからだという。
済美高では、2年生が1年生にムシを食べさせようとしたり、灯油を飲ませようとするという極めて悪質(というより非常に危険)な部内いじめが発覚している。これは看過できないことだが、安楽自身は関与していないらしい。それでも彼は落選した。高野連の事務局長によると「キャプテンでしたから」だという。いつから野球の実力ではなく「管理者能力」が選考対象要素になったのか。
また、不祥事に関与していない生徒が罰を受けねばならないとはすこしも民主的ではない。個人の尊厳が損なわれているともいえよう。
高野連は「連帯責任」が好きだ。不祥事を起こした学校に対外試合を禁止するのは大昔から繰り返されている。しかし、延々と続けられているこの処分が、どれだけ効果を挙げているのか?それが公表されたという話を聞いたことがない。効果が検証されない対策を長年継続しているとは、「Plan→Do→ Check」という概念は高野連には存在しないのか。私は、対外試合禁止を課すより大事なのは、問題を起こした学校と一緒になって再発防止策を検討し、その実行をモニタリング、効果があればそれを成功事例として全国に紹介することだと思う。
安楽投手の件にしても、「教育」の概念の欠如を強く感じる。叱ることや凝らしめること、表舞台から隠してしまうことが中心で、改善に必要なアクションを見つけ出すと言う想像力が欠如している。今、何が問題なのか、その問題を除去するには何が必要なのか、それを考え示唆してあげる指導者や管轄団体であってほしい。
安楽投手は甲子園でのその苛酷な起用が日米を股に掛けたタマ数議論、健康管理議論を呼んだ。しかし、本件もそれと同じくらい大きな問題だと思う。彼は高校時代にその健康のみならず人権も軽んじられたと言えよう。