尖閣諸島の認知度は91.3%、しかし問題の中身は…
内閣府は2017年10月、尖閣諸島に関する世論調査(※)の結果概要を発表した。その公開資料から現状の尖閣諸島への認知度などを確認する。
尖閣諸島は行政的には沖縄県石垣市の一部であり、南西諸島西端に位置する魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島、沖ノ北岩、沖ノ南岩、飛瀬などから成る島々の総称。戦後発効したサンフランシスコ講和条約で国際的に日本領帰属として確定しており、歴史的にも国際法上も疑うことなく、日本固有の領土である。ところが1960年代後半に東シナ海で石油埋蔵の可能性があることが指摘されて「以降」、中国や台湾が領有権を主張し始め、外圧や実力行使を繰り返している。
なお現時点ではすべてが無人島で、久場島(及び周辺小島)は私有地、その他は国有地となっている。
今調査によれば尖閣諸島そのものの認知度は高く、調査対象母集団全体の91.3%が知っていると答えた。知らなかった人は7.2%に留まっている。
一方、尖閣諸島に係わる諸問題への認知度はそれほど高くないことが、今回の調査で明らかにされている。次に示すのは尖閣諸島を知っている人に限定し、具体的な諸問題の認知度を尋ねたものだが、ニュースなどで頻繁に公知されている事象は7割強、それ以外は多くて6割近くに留まっていた。
選択肢の中でもっとも認知度が高かったのは「最近になって中国政府は、継続して政府の船舶を尖閣諸島周辺海域に派遣し、頻繁に領海侵入するといった行動を繰り返していること」で70.7%。今件は尖閣諸島そのものを知っている人に限定しているので、調査対象母集団全体では70.7%×91.3%で64.5%となる。
ある意味一番肝心な「尖閣諸島は日本が有効に支配しており、同諸島をめぐり解決すべき領有権問題が存在しないこと」との選択肢への認知度は41.0%。全体比では37.4%と4割を切ってしまう。また、中国などの挙動の起因が明確化・理解できる事実「尖閣諸島に関する中国・台湾による独自の主張は、東シナ海に石油埋蔵の可能性が指摘された後の1970年代になって突如として始まったこと」を知っている人は40.8%(全体比37.3%)で4割程度に留まっている。
前回調査からの変化を見るに、すべての項目で認知度が減っている。まだ記憶に新しい大量の中国籍漁船によるサンゴ盗取問題が良い例となるが、印象的な話は多く伝えられているものの、本質的な面での周知が不足しているのは否めない。要は周知効果の高いメディアにおける、必要な情報の発信不足によるものと考えられる。メディアにとって尖閣諸島問題も消費型コンテンツの一つとしての認識以上のものではないのだろう。
尖閣諸島問題については今まで以上に多種多様な方面から、竹島問題同様に、積極的な啓蒙活動と事実周知への努力が求められよう。
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※尖閣諸島に関する世論調査
2017年8月3日から13日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する人3000人に対し、調査員による個別面接聴取方式によって行われたもので、有効回答数は1771人。前回(2014年実施)までの調査では20歳以上を対象としていたのに対し、今調査からは18歳以上を対象としているため、2014年分までと2017年分以降との間に厳密な連続性はないことに注意が必要。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。