半沢直樹CM「矢沢永吉のヘイ・ジュード」の100万再生からYoutubeのメディア特性を考えてみた
あのドラマ『半沢直樹』の90秒CM(サントリー・プレミアムモルツ)でたった1回だけ流れた矢沢永吉が歌う「ヘイ・ジュード」の動画が話題となり、公開から約1ヶ月で110万回の再生回数となっています。
優れた動画が1本出て、そこに人が真似がしやすいコンテキストや仕組みがあると、いわゆる「やってみた」動画が、たくさん作られるようになるのは、ここでわざわざ解説するまでもないことで、すでに動画の世界では、ひとつのカルチャーになっています。
この矢沢永吉のヘイ・ジュードでも、すでにHuman Beatboxによる優れたストレートカバーが出ています。ヒューマンビートボクサーDaichiさんですね。
もう、これは当然出るべきものが出ているという感じもあり、daichiさんのパフォーマンスはすばらしいの一言なのですが、すでにどこかで見た光景となってしまってもいます。これはdaichiさんがうんぬんということではなくて、もはや定番の領域にdaichiさんの芸がなっているということなんだと思います。daichiさんの再生回数は、本家矢沢永吉の110万再生と比較すると、約6万再生。ざっくり5%となっています。
そして、同様に5%である6万再生をたたき出しているのが、MEGWIN TVによるパロディーです。
この2つの動画、それも「やってみた」の手法が全く違う動画が同様の再生回数であること。これは、さきほども言ったようにまずはコンテキストの存在が大きいです。
- 矢沢永吉
- ビートルズ
- ビールのCM
- プレミアムモルツのお馴染みのモノクロ映像
つまり、自分の特技を利用する元ネタとしての完成度が、矢沢永吉のヘイ・ジュードはすごく高いわけです。しかし、動画があるだけでは、そもそもの110万再生も、2つの動画の6万再生も実現されません。
話題のドラマの90秒CMという特別なしかけはあったにせよ。テレビからYoutubeという動線が、この数年でどんどん太くなっていることを、この動きは証明しています。同時に、Youtubeの再生回数というのは、一部のファンによる集中的な投下によるランキングのハッキングがほとんど通用しない、実にシビアなメディアです。
このYoutubeの再生回数というのは、言ってみればファン投票のようなものです。その昔であれば、曲をラジオで聞き、それを録音して聞いたり、レンタルで借りていたCDをiPodで聞く、そういった様々な環境での再生回数が、Youtubeというメディアに集中して可視化されたものが、われわれがいつでも冷酷な数字として見ることができる再生回数というものの正体だと思うのです。
PCでYoutubeを見ていた時代はとっくにどっかにいってしまって、スマホでそれこそ寝ながらYoutubeの動画見る時代の再生回数というのは、こういう類いのものだと思うのです。
そして、こうなってしまうと、もはやなんとか売上ランキングみたいなものよりも、Youtubeの再生回数こそが、注目されたかどうかのスケールとなってきます。また、Youtubeチャンネルの登録人数も評価の一端になりますし、100万再生レベルの動画の1本も持っていないようでは、企業の価値やアーティストの力もいわゆるメジャークラスになったと判断されない時代になっているのではないかと思います。
テレビCMにメディア特性があるように、Youtubeにもメディア特性があり、同時にネットのテクノロジーの影響による特性も存在しています。マイナーからメジャーにジャンプアップする際に、そこを戦略的に利用することが、これからのPRやプロモーションではますます必須となっていくのではないかと思います。