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ドン・キングがプロモートするNABAクルーザー級チャンピオン

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
David Martin-Warr/Don King Productions

 第5ラウンド1分40秒、コーナーで滅多打ちにされるニック・キッシュナーを、レフェリーが救い、試合は終了した。2022年1月29日のことである。

 スイッチするキッシュナーを一蹴したサウスポーのジョニー・ラングストンは、この一戦でNABAクルーザー級タイトルを獲得。ドン・キングのお眼鏡にかなったか、といった内容のファイトだった。

David Martin-Warr/Don King Productions
David Martin-Warr/Don King Productions

 ラングストンは、去る6月11日に2-1の判定勝ちで同タイトルの防衛に成功。第8ラウンドにダウンを奪いながらも、1月ほどの圧勝は飾れなかった。目下の戦績は10勝(4KO)3敗1ノーコンテスト。

 御歳90歳のプロモーター、ドン・キングは、このところ精力的な働きは見せないものの、年に数回、自らの手で興行を打っている。その度にラングストンを起用中だ。

撮影:筆者
撮影:筆者

 キングと契約するクルーザー級選手として私が真っ先に思い出すのは、ケルビン・デイビス(44)だ。

 2000年代中程、キングはIBFクルーザー級チャンピオンだったデイビスの防衛戦をまったく組まず、飼い殺しにした。デイビスは身長167センチながら鋭いステップインとハードパンチで<リトル・タイソン>と呼ばれた選手だったが、「リングに上がらない」という理由でタイトルを剥奪された。更にキングとの法廷闘争の準備で錆び付いてしまった。

 晩年は6連敗を喫し、その後初回KOで敗れ、寂しく現役生活を終えた。

写真:ロイター/アフロ

 以前ほどの影響力を持っている訳ではないが、今後、キングはフロリダ州サラソータで生まれ育った32歳のNABA王者をどのように扱うのだろうか? ラングストンがデイビスの二の舞にならないことを祈る。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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