大雨の後に死を招く「雷雨ぜんそく」の恐怖
時は11月21日、オーストラリアの、とある救急センターでのこと。その日、昼過ぎまでは晴れていたものの、夕方から天気が急変し、雷を伴った大雨が降り出した。その後間もなくして、呼吸困難やぜんそくの症状を訴える患者の搬送要請が町中から殺到した。結局、8,500人が病院で治療を受けた。
いったい、この街に何が起きていたのだろうか。
これは先週、メルボルンで実際に起きたニュースです。残念なことに、呼吸困難によって6名が死亡したと伝えられています。死因とされたのが「雷雨ぜんそく」と呼ばれる、雷雨が引き起こした呼吸器疾患でした。
「雷雨ぜんそく」とは
(↑雷雨ぜんそくを紹介した豪州のビデオ)
ぜんそくとは、「アレルゲンや刺激物質などによって気道が過敏に反応し、咳、喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難などを起こす病気」(家庭の医学・健康用語辞典)とされています。
一般に花粉の粒子は、鼻毛でブロックされるほどの大きさなのですが、大雨が降るとその限りではありません。花粉が雨に濡れ、膨らみ破裂することで、元の10分の1くらいの小さな粒が飛び散ります。それらが強風によって遠くまで飛ばされ、体内に侵入して、咳、ひどい時には呼吸困難をもよおすというのです。
南半球では春にあたる今、花粉飛散量がピークに達しています。このメルボルンで起きたケースでは、「ネズミムギ」が原因と見られています。ネズミムギとは、イネ科の植物で、日本でもよく雑草として見かけられます。
過去の事例
実は、世界で最初に記録された「雷雨ぜんそく」もまた、今回と同じメルボルンで起きています。それは1987年のことで、通常よりも5倍多いぜんそく患者が出たようです。
その他、アメリカ、カナダ、イギリス、イタリアなどでも症例があるようで、例えば1994年6月花粉のピークを迎えたロンドンでは、雷雨のあとに640人の患者が病院で治療を受けたと報告されています。そのうち約半数は、それまでぜんそくではなかった人たちでした。
日本でのリスク
では「雷雨ぜんそく」は、日本でも発生するおそれがあるのでしょうか。
実際、花粉飛散期に豪雨が降ると、その次の日に小さな粒子が増加しているという調査結果があります。また、今回の「雷雨ぜんそく」の引き金となった、ネズミムギへのアレルギーを持っている人も多くいるようで、国内で全く起こらないとは言えないかもしれません。