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【板倉滉】「フローニンゲンに来てよかった」と思う日々

中田徹サッカーライター
フローニンゲンのホーム『ユーロボルフ』 【撮影:中田徹】

■ 「常に意識するのは、相手の嫌なところに動くこと」

 11月29日、オランダリーグ8位のフローニンゲンは、1対0でウィーレム2を下した。CB板倉滉は「今日は『いい試合ができたなあ』という感じです」と充実した表情で語った。

 立ち上がりからエンジン全開で入るのが、フローニンゲンの特徴だ。ウィーレム2戦では開始20分間で8本のシュートを放ち、6本のCKを得た(この間、ウィーレム2のシュートとCKはゼロ)。

 その後、両チームはシステム変更を繰り返して相手チームをけん制しあい、フローニンゲンの攻勢は薄れた。それでも攻撃の手数はフローニンゲンのほうが勝り、MFエル・メサウディが61分に入れた決勝ゴールで順当勝ちした。

 

 守備を土台にチームの積み上げを図っているフローニンゲンに於いて、板倉はキーパーソンの一人になっている。チーム全体として相手を押し込んでいるとき、板倉は相手のカウンターの芽をしっかり摘み、逆にチームが劣勢に陥っているときには力強く相手の攻撃を跳ね返している。最終ラインからの安定したパス配給は、彼が持つもともとの武器だ。ウィーレム2戦では3バック→4バック→3バックと守備のシステムをスムーズに移行し、守備の要としてクリーンシートに貢献した。

 こうしたCBとしてのベーシックな働きをした上で、中盤に上がってからのスルーパス、ミドルシュート、相手ゴール前への駆け上がりといったリベロのような動きで、彼はチームの攻撃に厚みを加えている。

「相手を見ながらシステムを変え、相手を見ながらビルドアップができている。僕もたまにちょっとボランチの位置まで上がったり、相手の嫌がるところに動いたりすることを常に意識していて、それがうまくハマってます」(板倉)

■ ウォーミングアップにもフローニンゲンの特徴が出ている

 フローニンゲンの試合を見て感じるのが、カバーリングの意識の高さだ。どこのチームも数的優位を作って守ろうとしているが、「味方を助ける」という意味で背後をカバーする意識は希薄だ。しかし、フローニンゲンは、板倉が抜かれそうになったり、前に出てデュエルに挑んだりしても、誰かがしっかり裏をケアーしてくれている。「だから、安心して思い切って前に出ていける」と板倉は言う。

ここまでカバーリングを徹底しているチームは、オランダ国内にあるのだろうか?

「ないと思いますよ。やっぱり監督の色だと思いますよね。そこがフローニンゲンの良さにつながってます」(板倉)

 ウォーミングアップにも、フローニンゲンの特徴があらわれている。彼らの試合前のポゼッション練習は強度が高く、選手たちの声出しはひときわ大きい。

「フローニンゲンはウォーミングアップを激しくやりますよね。ここまで激しいのはフローニンゲンだけじゃないですか。練習もそう。多分、どこのチームよりも高い強度でやってます。そこが、うちの良さです。

 戦術的な部分でも、日本ではそこまで言われることがなかったけれど、フローニンゲンではとても厳しく言われます。練習もみんなガツガツやってます。そういうところを考えると今は日々、『フローニンゲンに来てよかった』と思えます。確実に自分のプラスになってますね」(板倉)

 練習から激しく、戦術は細かく。その上で、板倉は自身の個性を表現しながら8位フローニンゲンでプレーし、リーグ最少失点4位タイ(10試合で11失点)の堅守を誇るチームで欠かせぬ存在になっている。

サッカーライター

1966年生まれ。サッカー好きが高じて、駐在先のオランダでサッカーライターに転じる。一ヶ月、3000km以上の距離を車で駆け抜け取材し、サッカー・スポーツ媒体に寄稿している。

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