なぜハーランドの移籍は決まらないのか?レアル、バルサ、ドルトムント...市場の動きと各クラブの思惑。
彼をめぐって、ビッグクラブが争奪戦を繰り広げることになるかも知れない。
現在、去就に注目が集まっているのがアーリング・ハーランド(ボルシア・ドルトムント)だ。今季、公式戦16試合19得点5アシストを記録しており、圧倒的な決定力を示している。
レアル・マドリー、バルセロナ、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド…。複数クラブがハーランドに関心を示している。獲得レースは避けられないだろう。
「どこに行っても、ハーランドの話題だ。全世界で彼のことが話されている。私が知っているのは、レアル・マドリーが興味を抱いているということだけだ。ほかにも、25チームくらいは挙げられる。だがレアルの関心は確かだ」とはドルトムントのハンス=ヨアヒム・ヴァツケCEOの言葉だ。
「ハーランドは移籍するかもしれない。しかし、残留の可能性もある。少し前に代理人の(ミーノ・)ライオラと話をした。彼との会話は常に友好的なものだ。そして、今後、再び話す機会を設けるつもりだ」
■それぞれの思惑
マドリーがハーランドを狙っているのは間違いない。
だが現時点、マドリーのトップターゲットはキリアン・エムバペ(パリ・サンジェルマン)である。だが今季終了時にパリSGとの契約が満了を迎えるエムバペに関しては、フリートランスファーでの獲得が可能になる。
マドリーは数年前からエムバペの獲得を検討していた。実際、この夏に獲得に動いて、パリSGにオファーを出していた。そのために、ラファエル・ヴァランを移籍金4000万ユーロ(約52億円)でマンチェスター・ユナイテッドに、マルティン・ウーデゴールを移籍金4000万ユーロでアーセナルに売却して資金をつくっていた。
エムバペ獲得失敗で、逆説的に資金は貯められた。そのお金をビッグプレーヤー確保に費やせば、オペレーション成立は十分に可能である。そこで白羽の矢が立てられているのがハーランドなのだ。
しかしながらハーランドを獲得しようとしているのはマドリーだけではない。「ハーランドは次のステップに行く可能性がある。バイエルン、レアル・マドリー、バルセロナ、マンチェスター・シティ、そういったクラブへの移籍だ。シティはこの数年で5回リーグ制覇を成し遂げている。それはユナイテッドと比べて意味のあることだろう。ハーランドがドルトムントに移籍した時、次のステップがあるというのはすでにわかっていたはずだ」と語るのはライオラ代理人である。
シティは今夏、ハリー・ケイン(トッテナム)を手中に収めようとしていた。移籍金1億5000万ユーロ(194億円)を準備したものの、トッテナム側が首を縦に振らなかった。ただ、ペップ・グアルディオラ監督の提唱するフットボールを考慮すれば、ストライカーの必要性には疑問符がつく。“10番”としてもプレーできるケインに対して、ハーランドは典型的な“9番”だ。
バルセロナは今冬の移籍市場でフェラン・トーレス(マンチェスター・シティ)を獲得している。移籍金固定額5500万ユーロ(約72億円)+ボーナス1000万ユーロ(約13億円)で取引をまとめた。一方で、クラブには依然としてサラリーキャップの問題が残されている。
またハーランドの移籍を巡っては、契約解除金の存在が議論の的になってきた。
その額は7500万ユーロ(約92億円)だ。近年のマーケットの情況とハーランドの年齢やパフォーマンスに顧みれば、決して高い額ではない。いや、率直に言えば、非常に安い金額での買い物になるだろう。
ただ、その契約解除金の有無が本当のところでは定かではない。そこに関しては、ドルトムント、ライオラ代理人、いずれも言葉を濁してきている。行使するには一定の条件が必要、複数年経った際に適用される、決められたクラブとの間にだけ存在するといった説が展開されている。
無論、移籍するのであれば、ドルトムントとしては7500万ユーロ以上でハーランドを売却したいはずだ。となると、定められた額を明かすのは得策ではない。他方、そのラインがひとつの基準になるのは必然だろう。コロナ禍を超えて、最初の大型移籍が実現するのは、時間の問題だ。