これまでと違う「雨水」の低気圧
雨水(うすい)
2月19日(火)は二十四節季の「雨水」、暦の上では、「空から降るものが雪から雨に変わって雪が溶け始めるころ」です。
昔から農耕の準備を始める目安とされてきました。
「雨水」の3つの期間
初候
土脉潤起(つちのしょう うるおい おこる):雨が降って土が湿り気を含む
次候
霞始靆(かすみ はじめて たなびく):霞がたなびき始める
末候
草木萌動(そうもく めばえ いずる):草木が芽吹き始める
まだまだ寒い時期で、多雪地帯は積雪のピークですが、日本人は、暦の上の季節が一ヶ月早いことを利用して、次の季節に行うことの準備を始める日としてきました。
中国内陸部で作られ、中国内陸部の気候に対応した二十四節季という概念を、日本の気候に合わせて変えるのではなく、あえてズレたまま使うという、昔の日本人の知恵を感じます。
しかし、今年は暦通りになりそうです(図1)。
「雨水」の日の低気圧
「雨水」の日の朝、前線を伴った低気圧は東シナ海にあり、その後、日本列島を通過する見込みです(図2)。
低気圧が本州を縦断、日本海を北上、本州の南岸のいずれかを通るか、現段階では不確実ですが、暖気を持ち込んでくることには変わりがありません。
低気圧が日本海に入る場合は、低気圧に向かって強い南風が吹き、関東甲信地方で春一番が吹くかもしれません。
今年、平成31年(2019年)の春分の日(2月4日)、北陸地方では北陸西部で日本海に向かって暖かい南よりの風が吹いたとして春一番を発表しましたが、関東甲信地方では、横浜と千葉では強い風が吹いたものの、基準となっている東京で強い風が吹かなかったため、春一番は見送りになった経緯があります。
低気圧が本州の南岸を通過する場合でも、関東甲信地方は、今年多い南岸の低気圧とは違って、雨となります。
今年多い南岸の低気圧
今年の冬は、北日本までは寒気が南下しても、それ以上は南下しないことが多く、本州のすぐ南で低気圧が発生、あるいは低気圧が本州の南岸を離れて通過しました。
このため、関東地方では雪の日が多くなり、東京では6日も雪が降りました。
1月12日、31日、2月9日、10日、11日、15日の6回ですが、いずれも東京都心での雪はわずかで、横浜市と千葉市を結ぶラインから南の地方では雪の量が多くなりました。
今年多かった、本州のすぐ南での低気圧の発生による降雪の仕組みは、次のようなものです(図3、図4)。
関東の北にそびえる脊梁山脈を避けるように2つに分流した北西の季節風が、東海沖でぶつかり、静岡県から南東に延びる雲の列ができます。
その雲の上に小さな低気圧が発生し、発達した小さな低気圧の雲が関東南部にかかりますが、気温が低いために雪として降ります。
小さな低気圧は東進しますので、雪の主体は横浜市と千葉市を結ぶラインから南です。
このような降雪の場合は、雲の列ができるかどうか、雲の列ができてもその雲による降水が陸地にかかるかどうか、陸地にかかってもそれが雨になるのか雪になるのかなど、不確実性が高いことをいくつも判断する必要があり、気象予報士泣かせの予報が難しい事例の1つです。
多くの年のように、寒気が東日本まで南下していれば、本州の南海上で低気圧が発生することも、南岸を低気圧が通過することもなく、「西高東低の気圧配置なので関東地方は晴れ」という簡単な予報になります。
また、暖冬の年のように、暖気の北上が強ければ、低気圧が本州の南岸を通過しても、最初から雪を考える必要がなく、数多くある低気圧通過の予報となり、それほど難しくない予報になります。
春は花粉に黄砂に嵐の季節
今年は暦通りに進んでいるということは、季節が早く進んでいることの裏返しです。
週間天気予報によると、「雨水」以降は気温が上昇し、東京では最高気温が15度を超えますし、札幌でも最高気温が氷点下にならない(真冬日にならない)予報です(図5)。
春は心地よい暖かさをもたらすだけのものではありません。
春は花粉に黄砂、越境してくるPM2.5、そして嵐の季節です。
また、寒暖差が大きく、体調を崩しやすい季節でもあります。
今年の季節変化も、例年とは違うようですので、安全で快適な生活をするため、最新の気象情報の入手に努めてください。
図1、図2、図3、図5の出典:ウェザーマップ提供。
図4の出典:気象庁ホームページ。