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マナーの問題ではない? 人気ラーメン店が「ながら食い」を禁止したもっと大事な理由とは?

井手隊長ラーメンライター/ミュージシャン

飲食店で、スマホで動画を観ながら食事をとっている姿がよく見られる。いわゆる「ながら食い」だ。時間のない現代において、食事の時間すら惜しいということなのだと思う。

ラーメン店においてもよく「ながら食い」を見かけることがあって、せっかく美味しいのに麺が伸びたらもったいないなと思うことが多々ある。

博多ラーメン でぶちゃん 高田馬場本店
博多ラーメン でぶちゃん 高田馬場本店

東京・高田馬場にある人気ラーメン店「博多ラーメン でぶちゃん 高田馬場本店」は3月16日、長い期間悩まされてきた「ながら食い」を禁止することにした。

そろそろ

YouTubeなどの動画見ながらラーメンを食べる

「ながら食い」禁止にしようかな。

※のびて劣化するラーメンに限る。 

(「博多ラーメンでぶちゃん」Twitter 3月16日の投稿)

お金を払って食べているのだからどう食べてもお客の自由という考え方もある。その中で「禁止」という決断をしたのはなぜか。店主の甲斐康太さんに話を聞いた。

「スマホの普及と共に10年くらい前から増えてきたので、それくらいから気になっていました。

基本的には実害は無いのでお伝えすることはありませんでしたが、外で待ちのお客様がいる際に丁重にお伝えしたところ、怒って帰る方や、人によっては残して帰る、扉などの物にあたる方もいらっしゃいました」(甲斐さん)

店主の甲斐康太さん
店主の甲斐康太さん

外で待っているお客さんから指摘が入ったことも多々あったという。必要な時に都度注意するやり方から、このタイミングで「禁止」にしたのはなぜか。

「基本的には言いたくもないことなのです。お客様も言われたくないことだと思います。

先日、ホールで接客をしている際に、箸を置いてYouTubeに没頭しているお客様がいました。満席で、お待ちのお客様もいる状況でした。それを目の当たりにして、もう言いたくもないからそういうルールにしようと決心がついたんです。

そんなルールは本来なら店に貼りたくもないんです。書いてあればいいって話でもないですし、とても悩ましい問題ですよね」(甲斐さん)

「でぶちゃん」のラーメン
「でぶちゃん」のラーメン

「でぶちゃん」は博多豚骨ラーメンを提供するお店。博多豚骨ラーメンの麺は極細で、ただでさえ茹で時間が短く、時間をかけて食べていると麺が伸びてしまう。少しでも美味しい状態で食べてほしいという店主の思いもあるだろう。

その中で、提供されたものをどう食べるかはある程度お客の自由だとしてきた。だが、外待ちのお客さんがいる中ではさすがに勘弁してほしいということだったのだろう。苦渋の決断だ。

「もしお店に実害があるのであれば、お伝えしなければいけないことはお伝えするべきだと考えています。

無法地帯になっているよりは、最低限のことが管理されているお店の方が多くのお客様は過ごしやすいはずだと考えています。

どの飲食店も触れたくない内容の話だと思うんです。“ルールの押し付け”と捉えられてしまうセンシティブな話ですが、お客様は皆、平等に食事を楽しむ権利を有しているので、その環境を作るのは店主の仕事の一つでもあると思います」(甲斐さん)

「ながら食い」は、食べる行為と別の行為を同時に行うため、食事だけに意識が向かず、噛む回数が減ったり、満腹感が出なかったりと健康に良くないという報告もある。

「食事」の時間をどう捉えるかということになってくると思うが、せっかく作っている料理を美味しく食べてもらいたいという店主の苦悩が伝わってくる。

※写真はすべて筆者による撮影

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ラーメンライター/ミュージシャン

全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。東洋経済オンライン、AERA dot.など連載のほか、テレビ番組出演・監修、コンテスト審査員、イベントMCなどで活躍中。 自身のインターネット番組、ブログ、Twitter、Facebookなどでも定期的にラーメン情報を発信。ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。本の要約サービス フライヤー 執行役員、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」事務局長も務める。

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