秋は「霧」の季節 霧にまつわる気になる話
8日(水)トランプ大統領の朝鮮半島非武装地帯へのお忍び訪問は、「霧」のためやむなく中止になったそうです。霧の原因は、朝の低温と寒冷前線通過による降雨で湿度が高かったことが考えられます。
日本でもこの時期に霧がしばしば発生し、霧は秋の季語にもなっています。秋に霧が多い理由は、朝晩の気温がぐっと下がることで、空気中の水蒸気が凝結し、水滴となって現れやすくなるためです。
砂漠の霧
霧が関係した興味深い話があります。世界一乾燥した場所として知られる南半球・チリのアタカマ砂漠は、時に何年も雨が降らないカラカラの大地です。20世紀初頭には173ヶ月(14.42年)連続して無降水で、世界記録にもなっています。にもかかわらず、この場所ではビールが製造されているのです。
それを可能にしているのが霧です。アタカマ砂漠は雨が降らないにも関わらず、海流の影響で頻繁に霧に包まれます。その霧から水を取り出せる魔法のネットのおかげで、飲み水が確保され、それが人々の生活を支え、はたまたビール製造にも使われているのです。
魔法のネット
このネットは1ミリほどの小さな網格子からできていて、そこに細かな霧の粒が付着すると結露して、大きな水滴になります。この原始的な装置のおかげで砂漠なのに潤い、年間24,000リットルのビールが生産されています。ビールの名前は「Atrapaniebla (意味:霧キャッチャー)」で、霧由来だけあって、他のビールにはない独特の味が楽しめるのだそうです。
(ペルー・リマで使われている、霧から水を製造するネット↓)
霧の町サンフランシスコ
一方、Fog Cityという別名を持つほど、アメリカ・サンフランシスコは世界的にも有名な霧の町です。霧に包まれたゴールデンブリッジの光景はあまりにも有名ですね。実は、この橋の色にも霧が関係しています。
橋の色である鮮やかな朱色は「インターナショナルオレンジ」といって、航行する船にとって霧などの視界不良の状況でも目立つ色なのです。
減少する霧日数
しかし、この霧と橋の美しい光景が、近年、昔よりも見られなくなってきているようです。カリフォルニア大学のジョンストン博士らによると、1901年からの100年間で、夏のカリフォルニアの霧の発生時間が3分の1も減少し、平均で1日3時間も短くなっているのだといいます。その原因には、海と陸の温度差が小さくなっていることが考えられるようです。
日本でも同じような傾向が見られます。気象庁によると、1931年~1940年と、2004年~2013年までの霧の日数を比較すると、東京では48.5日→0.7日、京都では80.6日→0.0日と、近年大幅に減っているようです。ヒートアイランド現象によって、地面の温度が下がりにくくなっていることが一因と考えられています。
最近、霜柱を知らない若い方が多くなっているように思いますが、これからは霧に馴染みのない世代も増えるのかもしれませんね。