H3試験機1号機 射点で打ち上げ停止。だいち3号とともにいまだ地上に
2023年2月17日午前10時37分55秒、鹿児島県の種子島宇宙センターで実施されたJAXA・三菱重工業の新型液体ロケット「H3」試験機1号機の打ち上げは、固体ロケットブースタが点火されなかったため緊急で停止された。
打ち上げオペレーションチームのアナウンスによれば、「H3のメインエンジンは点火されたものの補助ロケットである固体ロケットブースタ(SRB-3)に点火されなかった」としている。状況は確認中だが、すでに17日の打ち上げウインドウの範囲である10時44分15秒を過ぎたため17日の再試行は行われない。
機体の状況は不明だが、プレスセンターのある竹崎展望台からの見た目では大きな損傷はないように見える。今後、JAXA側から詳細の説明会見がある見通し。
「LE-9は全力で飛ぼうとしていた」H3プロジェクトチーム 岡田匡史プロジェクトマネージャ会見
2月17日午前に発生したH3試験機1号機の打ち上げ停止について、JAXA H3プロジェクトチームの岡田匡史プロジェクトマネージャは現在調査中の発生した事象について午後2時から記者会見を行った。岡田PMによれば、H3第1段機体の下部に取り付けられた1段制御用機器で主エンジンの「LE-9」に着火され、続いて補助ロケットである固体ロケットブースタに点火信号を送る段階で信号が送出されなかったと見ていると説明した。
打ち上げ直前の段階では、ロケットの手順は自動的に進行し主エンジン着火、SRB-3点火の順番に進む。SRB-3は固体燃料を詰めて作られており、いったん点火すると止めることができないためシーケンスの最終段階に設定されている。LE-9着火からSRB-3点火までは5~6秒。この中で発生した事象とされるが、原因となった機器や異常を検知したステータスの詳細などは特定されていない。
LE-9、SRB-3に機能上の問題があったとは考えにくいと岡田PMは見ており、「LE-9は全力で飛ぼうとしていたのに止められてしまった」とエンジンの心境になって語った。主エンジンは数秒は燃焼しており、一種の燃焼試験を行ったような状態だったという。
現在は一段制御用機器の電気系エンジニアが回路図等をもとに問題の追求を行っている。H3に充填された液体水素、液体酸素の推進剤は17日午後に抜き取る必要があり、解明には数日以上かかる見通しだ。3月10日まで打ち上げの予備期間が設けられており、H3プロジェクトチームはできる限り迅速に予備期間内の打ち上げを目指すとしている。
搭載された地球観測衛星「だいち3号」の機体は健全だといい、一定期間はロケットに搭載したまま不具合の検証作業などを行うことができる。検証が長期間に渡れば衛星を降ろすことも考えられるが、H3プロジェクトはそれは行わない方向を目指している。
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