「ベルリンの慰安婦像撤去」を傍観する文在寅政権を突き上げる韓国の保守メディア
韓国の文在寅政権は「左派」「親北」であるので「反日を政治に利用している」との見方が日本では定着しているようだ。韓国政府が時に日本に圧力を掛ける手段として「反日カード」を巧みに駆使している面は否めない。しかし、煽っているのは必ずしも政府・与党とは限らない。メディアもしかりである。「親日」とみられている韓国の保守系メディアさえ政権への攻撃材料として「反日」カードを使うことがしばしばある。
日韓の新たな懸案として浮上しているドイツ・ベルリンの中心地に設置された「少女像」と称される「慰安婦像」について「撤去されないよう政府としてもドイツに働きかけるべきだ」とか「外務省は日本のように積極的にロビー活動を展開すべきだ」との世論の突き上げに対して韓国政府は「民間(在独の韓国人団体)の自発的な動きに政府が外交的に関与するのは望ましくない。政府の関与は問題の解決に役に立たない」と、傍観する姿勢を貫いている。
この外務省の対応に韓国の進歩派から「親日媒体」と罵倒されている保守系の「朝鮮日報」は12日付の記事で「茂木敏充外相まで乗り出してきた日本の外交戦により『平和の少女像』が撤去の危機にさらされているのに韓国外交部が対応しないことに一部では『日本は政府が韓国の民間団体の活動を制限しているのに韓国外交部は終始、原論的な見解を表明して手をこまねいている』と指摘する声が上がっている」と報じていた。
また、「日本政府がドイツ政府に『少女像撤去』関連ロビー活動をしている間、韓国外交部はその動向を正確に把握することも、ドイツに韓国側の見解を表明することもできなかった」と、外交部の「怠慢」を暗に問題にしていた。
(参考資料:「慰安婦決議案を阻止せよ!」 米国での日本のロビー活動の実態(上)
(参考資料:「慰安婦決議案を阻止せよ!」米国での日本のロビー活動の実態(下)
さらに、韓国外交部の報道官が記者会見(8日)で、「政府が外交的に関与することは望ましくない。政府は関連状況に注視しながら適切な対応を検討する」と答えたことについても「3日後の11日になってもこれといった対応措置を打ち出さなかった」として「外交関係者の間では『外交部は現政権の反日・克日政策に同調していたが、肝心の海外における少女像撤去など日本政府の攻勢に対しては傍観ばかりしている』との声が上がっている」として、外交部を突き上げていた。
「朝鮮日報」と並んで文政権に批判的な保守系の「中央日報」も「ベルリン『少女像撤去』の背後に日本のステルスロビーが」(12日付)や「茂木が直接動いたって?・・・『ドイツ少女像』韓・日神経戦」(14日付)などの記事を載せていたが、「反日を率先した韓国政府、ドイツ少女像撤去には対応見せず」の見出しの記事(13日付)では「日本が外交総攻勢に乗り出しているのに日本のようにすれば『韓日の葛藤事案』と見なされるため慎重でなければいけないというのが外交部の立場のようだ」と批評し、「前に出ていないだけで手放しにしているのではないか」と韓国外務省の姿勢を遠回しに批判していた。まるで、日本が撤去させるため外交攻勢を掛けているのに「外交力を発揮すべき」韓国の外務省が手をこまねいているのは問題だと言いたいようだ。
進歩派政権を攻撃する材料として野党や保守メディアが「反日カード」を逆手に使うのは今に始まったことではない。
過去にも左派の金大中政権(1998~2002年)が竹島(韓国名:独島)問題を棚上げにして日本と漁業協定を交わしたことを問題視し「典型的な屈辱外交」と批判したことがあった。当時、保守野党は「独島を事実上日本に渡し、我が漁民の生命線である漁業権を譲歩した売国行為である」と金大中政権の対日姿勢を激しく非難していた。
次の進歩派の盧武鉉政権(2003~2007年)下でも同じ現象が見られた。
竹島の海底地形の韓国名称申請をめぐり日本と対立した際、日本政府が「国際会議に韓国が韓国名称申請を断念しなければ我々としても海洋調査を実施せざるを得ない」と毅然と対応したところ、盧武鉉政権は当初「拿捕など実力行使も辞さない」と強気一辺倒だった。しかし、最終的には盧大統領は申請を自制し、日本に妥協した。ところが、韓国の野党と保守メディアはこぞって盧大統領の妥協を「韓国の完敗」と称し、また日韓合意文については「韓国の実質的降伏宣言に等しい」と酷評し、盧政権の対日交渉を「屈辱外交」「弱腰外交」「売国外交」と激しく批判していた。
時の政権、大統領が支持率アップのため、求心力を高めるため「反日」を政治利用するのは保守政権であれ、進歩政権であれ、韓国の「十八番」かもしれないが、メディアも似たり寄ったりだ。