「ベルリンの慰安婦像」が撤去保留へ! 日本のロビー外交が裏目?
ドイツの首都・ベルリン市の中心地、ミッテ区に設置されている「平和の少女像」と称される旧日本軍従軍慰安婦像の撤去が保留となった。
(参考資料:ベルリンの「慰安婦像」が撤去へ! 日本のロビー外交の成果か!)
ミッテ区は今月8日、この像を設置したドイツ在住の韓国人団体「コリア協議会」に対して「今月14日までに撤去せよ」と命じていた。フォンダッセル区長は「自主的に撤去しない場合は、市当局が強制的に撤去し、その費用を協議会に請求する」との強硬方針を打ち出していた。
保留となったのは「コリア協議会」がフォンダッセル区長の撤去命令の執行停止仮処分をベルリン行政裁判所に申請したことによる。
(参考資料:撤去期限が迫る「ベルリンの慰安婦像」 韓国人団体は法的措置で「徹底抗戦」へ)
ブランデンブルク門やベルリン中央駅などがあるミッテ区の公共の場に建てられている像の前では昨日、「コリア協議会」の在独韓国人や支援するドイツの女性団体がフォンダッセル区長の撤去命令の撤回を求めて集会を行っていたが、区長が突如現れ、マイクを握り、対話による解決の意向を表明していた。
裁判所の最終判断までには最短で数週間、最長で数か月かかることから司法による解決ではなく、話し合いでの解決を呼びかけたことで近々、区長と「コリア協議会」との間で対話の場が設けられることになった。
フォンダッセル区長が許可から一転不許可、撤去を決めた理由は像に刻まれた碑文にある。碑文には「第2次世界大戦当時、日本軍はアジア・太平洋全域で女性を性奴隷として強制的に連行した」と書かれてあった。
「コリア協議会」は像の設置申請をした際に碑文については事前に通告してなかった。このことから区長は「ミッテ区が日韓の政治的対立を誘発し、日本に反対している印象を与え、日本各地やベルリンで、いら立ちを引き起こしている」として「一方的な公共場所の道具化を拒否する」として、許可の取り消しと撤去を命じたとされている。
しかし、「コリア協議会」では区長の方針転換は外圧、即ち日本政府が撤去に向けて現地の日本大使館を中心にドイツ外務省に対して活発なロビー外交を行った結果とみなしている。
加藤勝信官房長官が9月29日の記者会見で慰安婦像の設置について「政府としては撤去に向けてさまざまな関係者にアプローチし、わが国の立場を説明するなど引き続き働きかけを行っていきたい」と発言していたことや茂木敏充外相が10月1日、ハイコ・マース・ドイツ外相とテレビ会談を行った際にドイツ政府に撤去するよう協力を求めていたことなどをその根拠に挙げていた。日本はこれまで▲慰安婦像は日本への敵意を煽る反日民族主義の表現である▲慰安婦問題は2015年12月の日韓合意で解決済であることなどを挙げて設置に反対していた。
「コリア協議会」と支援団体ではこれまで「慰安婦問題は韓国だけでなく、アジア・太平洋地域の多くの国々で発生した共通の問題である。慰安婦像は単に日韓間の問題ではなく、戦争被害女性問題という普遍的な価値を象徴したものである」として区長に翻意を促していたが、区長が碑文の内容を問題視していたことで碑文を修正することで折り合いをつけることを検討している。具体的には「反日民族主義の表現でない」ことを証明するためベトナム戦争に参戦した韓国軍のベトナム女性への性暴力も含めて普遍的なものにすることを考慮しているようだ。
今回シュレーダー元首相まで巻き込み、国際的な関心を呼んだことでミッテ区の各政党からは「コリア協議会」との対話の申し入れが相次いでいることから「コリア協議会」では像の設置の意味を理解してもらえれば、1年期限ではなく、永久的に設置が可能になるとの期待感も高まっている。
仮に1年限定ではなく、永久保存ということになれば、騒動を起こし、40近いドイツの女性、市民団体まで「コリア協議会」に加勢させてしまったこと、また外交問題に発展させたことが日本にとっては裏目となってしまう。