韓国でのカタールW杯予選Gを盛り上げた “日本がらみの恐怖”
先のグループリーグ最終節、ポルトガル戦の最高視聴率は35.2%だったという。韓国でもサッカーW杯は試合を追うごとに盛り上がりを見せている。
国内最大のポータルサイト「NAVER」上で「ワールドカップ 熱気」と検索すると、一番上に出てくるのは「健康被害」の話だ。
「ワールドカップを観るために、毎日『チキン&ビール』をやっていると健康に後遺症が残ります」(「国民日報」)
その他「試合を見ながら夜食を食べると分量調整を誤る」「食道を痛める」といった話も。
3日、ラウンド16進出を決めたポルトガル戦のパブリックビューイングの人では8000人とやや静かだったゆえ「家でデリバリーでチキンなどを頼んでしっぽり楽しむ」という姿が見えてくる。
日本快進撃の"影響"をもろに受け…
この盛り上げに一役買った要素がある。
「対戦順」
韓国が所属した「H組」の影響だ。グループリーグではA組から試合をやっていき、各巡の最終日に登場するのが今回韓国が所属したH組。このためこういった傾向が起きた。
「もろに他のアジア勢の試合の影響を受ける」
それは主に日本を指す。つまりは…
「日本がベスト16なのに、もし自分たちが行けないとかなりヤバい」
先のグループリーグ最終節ポルトガル戦が終わった後に、韓国代表MFチョン・ウヨン(アル・サッド/カタール)がこう発言した。
「オーストラリアと日本、アジア勢の戦いぶりがいい刺激になった」
この意味を読み解くならば「かなり焦りもした」「プレッシャーだった」ということ。
別の選手からもこんな証言が。
「日本も上がったのに…自分たちも行けると思っていた」(ポルトガル戦でW杯初出場を果たしたソン・ジュノ)
メディアもまた、韓国よりも先に2勝を挙げ、ラウンド16に進出した日本のことに触れた。
「日本16強、戦意に火が着いた韓国」(ノーカットニュース)
いっぽう、ネット上のユーザーのコメントはもっと正直だった。
「日本がベスト16に行くのに、韓国が行けなかったらベントは弁当になる」
日本統治時代の影響から「弁当(ベントー)」はそのまま通じる。ポルトガル人監督、パウロ・ベントの名誉が著しく傷つく、ということ。
また別のユーザーはずばりこういった発言も。
「日本がワールドカップで16強に4回入って、しかも2回連続。韓国はなにしてんだ? サッカーに関してはプライドがあるのに」
韓国の記者仲間の話によると大韓サッカー協会側も「日本16強、韓国脱落」のリスクはかなり懸念していたという。この構図、国内でのサッカー人気にとって大打撃なのだ。
90年代頃までとは違い、日本の躍進を褒め称える雰囲気は出てきているものの、「だからといって自分たちが対照的に没落するのは困る」という話だ。
まさに、そっちのほうが死の組だったんじゃない!?
"自動振り分け"で決まった韓国のH組行き
グループリーグの組分けの他に、「対戦順」も今後W杯を楽しむ要素になっていくのではないか。
思えばこの話は、2022年4月1日のファイナルドローに始まった。
第4ポッドに入った日本と韓国。
当日、スペインとドイツが先に入ったE組の4番目の国として「JAPAN」の名が呼ばれた。
抽選会の中継を見た韓国の解説者陣は大爆笑。この動画が300万回再生され、その月の「日本関連YouTube動画再生回数第1位」となった。
ワールドカップ組分け 韓国で「日本を笑う動画」が300万回再生 じつは”危険”なのはそっちだ
今となって思うことだが、その後の抽選会の進行では、あるルールが日本と韓国の運命をまた変えていた。
「同じ大陸同士のチームは同組にならない」
「ヨーロッパは例外。ただし3チームは同組にならない」
第4ポッドの残りは「クロアチア」「カメルーン」「韓国」だった。
これらをグループF、G、Hに分ける作業だったが、じつのところ日本がE組に入った瞬間に「抽選会全日程は終わっていた」。
F組 ベルギー、カナダ、モロッコ
モロッコがいるからアフリカの国、つまりカメルーンは入らない。
G組 ブラジル、セルビア、スイス
ヨーロッパがすでに2カ国入っているから、クロアチアは入らない。
つまりはF組にクロアチア、G組にカメルーンが入ることが自動的に決定した。
結果、韓国はH組に振り分けられた。この結果が…12月3日までの韓国をかなり苦しめたのだ。もはや何が「死の組」なのかも分からない。最後に登場することで、苦しむのだから。
ちなみに日本は、この「自動振り分け」でF組に入ったクロアチアとラウンド16で対戦するのだから、なかなかの運命でもある。
波乱続きの大会だ。アジア勢が全7勝を挙げ、3カ国がラウンド16に進出。グループリーグで「無傷」だったのはオランダとイングランドくらい。日本と韓国に限って言えばまさかの「死の組」の伝播も…こういった点も今大会の楽しみか。