知らなきゃ損。週末「寝坊」している男性には脂質異常症が少ない【ちょっと意外な最新論文】
血管の壁を変性させ血管閉塞のリスクを上げる脂質異常症
コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド:TG)が気になっている人はいませんか?日本動脈硬化学会のガイドライン(22頁)によれば、「悪玉」と言われるLDLコレステロールは「120」mg/dL以上で「要注意」、「140」以上になると「脂質異常症」と診断されます。トリグリセライドは「150」以上で脂質異常症です。
脂質異常症を放置すると、これらの余分な脂が血管の壁に侵入しコブ(プラーク)が出来上がります。これだけでも血の流れが悪くなりますが、何かの拍子でこのコブを覆っている薄い膜が破れると、中にたまっていた脂と接触した血液はたちまち凝固してしまいます。そうすると血管は詰まり(閉塞)、その先の細胞は血液(酸素)を受け取れず死に瀕することに。これが脳の血管で起これば「脳梗塞」、心臓の壁で発生すれば「心筋梗塞」です。
「週末朝寝坊」の有無で分け脂質異常症の割合を比べてみると・・・
で、本題です。
この脂質異常症を楽に回避できる方法があるかもしれません。それは週末の「朝寝坊*」です。延世大学(韓国)のYe Seul Jang博士たちが1月17日(2023年)「サイエンティフィック・レポート」誌で報告しました [文献1] 。同誌はあのネイチャーと同じ出版社から出されている学術誌です。簡単にご紹介しましょう。
解析対象になったのは、現在働いていて、脂質異常症*の治療薬を飲んでいない成人4000人強です。平日の睡眠時間は7〜8時間が最も多く(約半数)、次いで「7時間未満」(3割強)でした。この人たちを、週末に「朝寝坊」を「する」人たちと「しない」人たちに分け、脂質異常症と診断されている割合を比較してみました。
・朝寝坊:週末に「月〜金」よりも少しでも長く睡眠
・脂質異常症:高コレステロール、高LDLコレステロール、低HDLコレステロール、高トリグリセライドのいずれか。
男性では「週末朝寝坊」で脂質異常症である確率が24%の低値
すると
男性では週末に「朝寝坊」すると「寝坊しない」に比べ、脂質異常症である確率は相対的に24%減少していました(0.76倍)。具体的には「週末寝坊」を「しない」男性の脂質異常症の割合が43%だったのに対し「する」男性では36%のみだったのです。そして脂質異常症である確率が一番低くなるのは「1時間超・2時間以内」の朝寝坊でした。
これに対し女性では「週末朝寝坊」と「脂質異常症の有無」の間に何の関係もありませんでした。脂質異常症である割合も「しない」の24%に対し「する」では19%とあまり差はありません。閉経前の女性は脂質異常症のリスクが低いので、それが影響しているのかもしれません。
睡眠不足が脂質異常症の一因?
ただし男性でも「朝寝坊が脂質異常症を減らしている」のか、その逆で「脂質異常症でないければ週末によく眠れるのか」、この研究だけでは分かりません。この点は注意が必要です。しかしJang博士たちは前者だと考えているようです。というのも睡眠不足の人はその後、高コレステロール血症になりやすいという経時的な観察研究が報告されているためです [文献2] 。「朝寝坊」が脂質異常症を減らしているのかもしれません。
最後に
いかがでしたか?あなたがもしもコレステロールや中性脂肪を健康診断で注意されている、または気になっている男性なら、週末は2時間だけ長く眠りませんか?「健康のため」という大義名分が立つ以上、大手を振って(?)朝寝坊できるのです。
今回ご紹介した論文(記事末)の要約は無料閲覧できます。すべて英語ですが、無料翻訳サイトのDeeplを使えば簡単に日本語にも直せます。
またコレステロールについては「コレステロールを下げても脳出血は増えない!」という記事も書いています。こちらも是非お読みください。
今回ご紹介した論文
- 週末寝坊する男性には脂質異常症が少ない [サイエンティフィック・レポート誌HP]
- 睡眠不足だとその後、高コレステロール血症になりやすい [米国国立医学図書館HP]
【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容はあくまでも「論文筆者」によるものです。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。