【参院定数6増改正案】自民党・船田氏が造反も不発!あっさり改正へ
3時間の審議で強行採決
参議院埼玉県選挙区の定数を2議席、比例区の定数を4議席増やし、比例区の中で政党が「特別枠」を自由に設置できる公職選挙法改正案が7月17日、衆議院政治倫理・選挙制度特別委員会で可決された。
立憲民主党、国民民主党、無所属の会そして日本維新の会からの質問が終わったところで、自民党の白須賀貴樹衆議院議員が即時採決を提案。それを阻むかのようにその直後、立憲民主党の森山浩行衆議院議員が平沢勝栄委員長の不信任案の緊急動議を提出した。
もっとも委員長席に野党議員が駆け寄ったり乱闘するなどの混乱はなく、これらは“一連の儀式”のようにも思えた。しかし委員長不信任案も公職選挙法案も怒号が飛び交う中で採決が行われ、決して穏便なものではなかった。
そもそも同法案について衆議院で審議された時間は、13日の同委員会分を含めてもわずか3時間程度。いくら参議院の問題とはいえ、民主主義の代表制に直結する重要事項で、おざなりにしていいはずはない。合区によって失った議席を自己の都合よく回復しようとする参議院自民党の思惑の露骨さのみが目立ったといえる。
「国民の理解が得られない」
そういうところに嫌気がさしたのかもしれない。自民党の船田元衆議院議員が17日、本会議での採決を棄権することを明らかにし、萩生田光一党幹事長代行に伝えている。党衆議院議員総会長の職についても二階俊博幹事長に辞表を提出済みだ。「消費税引き上げを前に、定数増は国民の理解を得られない」というのがその理由だが、ただこの日は朝日新聞が朝刊で古屋圭司衆議院議院運営委員会委員長の「政治資金パーティー券二重帳簿疑惑」を報じたために、衆議院の本会議は流れている。
しかし船田氏に同調する自民党議員がいるかというと、今週中に本会議で可決されることがわかっている法案に賛成しないのはなかなか難しい。そもそも自分の選挙に直結しない参議院の問題に、わざわざクビを突っ込む議員はそうはいないからだ。
船田氏が独自の行動をとれるのは、小選挙区で自力で当選できる自信があるというのも理由だろう。有力者の応援を頼みにする議員なら、いやでも党の顔色を窺わざるを得ない。
しかも船田氏をもってしても、法案に反対票を投じることができないという厳しい現実がある。賛成の党議拘束がかかった法案に反対するなら、反党行為として処分の対象にもなってしまうからだ。
さて6増案を出した自民党は「増員に伴って増加する費用については、アウトソーシングやその他の経費削減で対応し、国民の負担にならないようにする」と、“事務方のコスト負担”を主張。しかしそれは可能なのか。
ある参議院関係者は、「建物の構造その他の設備について、定数を削減することは考慮されているが、増員は考慮されていない。それだけ事務方にかかる負担は大変なものになる」と主張。すでに受付業務などで行われているアウトソーシングは、さらに広げることも難しい。
参議院自民党本位で考えられた定数増
合区が初めて導入された鳥取県選挙区でしわ寄せを喰ったのは自民党で、その自民党の議席を回復するために増員案が提唱されたという経緯がある。だが鳥取県選挙区は常に自民党の候補が議席を得てきたわけではない。1995年の参議院選では無所属の常田享詳氏が当選し、2007年の参議院選で勝ったのは民主党公認の川上義博氏だ。
本当に国民に負担をかけない改革をするのなら比例区で定数を減らすしかないが、それでは比例区の議員の同意が得られない。比例区もまた既得権の温床となっているからだ。
そして議員は歳費も特権も無傷のままで、機能を維持するにはコスト削減も困難となると、おのずから国民にそのしわ寄せがくることになる。会期末にあわただしく行われた定数増員だが、どさくさに紛れた火事場泥棒のような定数増にもかかわらず、現状の国会は粛々として成立させてしまう。