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「キングオブコント」制覇から4年半。「ライス」の今

中西正男芸能記者
「ライス」の田所仁さん(左)と関町知弘さん

 「キングオブコント2016」王者のお笑いコンビ「ライス」の関町知弘さん(38)と田所仁さん(38)。優勝以降、ネットには「消えた」「優勝したのに…」などの文字が並ぶこともありましたが、新型コロナ禍で仕事が激減する中、今、思うこととは。

もう二度と人前で

関町:4月21日から、同期の「しずる」「サルゴリラ」との演劇ユニット「メトロンズ」の公演を開催します。

本来ならば去年4月に行うはずだったんですけど、新型コロナによる緊急事態宣言で延期になり、1年越しで日の目を見ることになりました。

「メトロンズ」も完全にそうなんですけど、新型コロナで仕事への影響も非常に大きく出ています。自粛期間中は、仕事は月1回あるかないか。否応なしに、いろいろなことを考えた1年でもありました。正直、この先、どうなっちゃうんだろうと。

田所:今までは劇場に出てコントをお見せすることが当たり前で、そこに対して何かを思うという感覚もなかったんです。

ただ、去年の今頃は「もしかしたら、もう二度と人前でコントをやることがないのかもしれない」ということも考えました。

自分たちの仕事の根本を見直すきっかけになったとは思います。

関町:いろいろと仕事が減った1年でもあったんですけど、それを強く体感したのが去年から今年にかけての年末年始でした。デビューした年以来、十数年ぶりに大みそかと元日が休みになったんです。

カウントダウンイベントもありましたし、年末年始は「キングオブコント」で優勝する前の、ほとんど仕事がない時代でも、何かしら仕事が入っていました。それがなくなった。

新型コロナ禍で劇場の出番枠も減った上に、そこに殺到する芸人の数も増えたからか、毎年稼働していたところが休みになるというのは、感じるところの多い出来事でしたね。

田所:これも、今思えば、ある種の甘えだったのかもしれませんけど、そこも当たり前のように仕事があるものだと思っていただけに、いろいろ考えることにもなりました。

「優勝したのに…」

関町:2016年に「キングオブコント」で優勝して、そこからお仕事をいただけるようになりました。

ただ、優勝をピークにテレビでのお仕事が徐々に減ってきて、去年は新型コロナ禍もあって、営業や劇場出番も減りました。

もちろん、仕事が減るのは良いことではないんですけど、これは本当にありがたいことに、僕らがいない場で名前を出されるという流れがすごく増えました。

去年の「キングオブコント」でも松本(人志)さんが「『キングオブコント』で優勝したコンビは、みんな結果出してますからね。『ライス』以外は」とイジってくださって。他にも、いろいろな方々がそんな感じで僕らの名前をボケとして使ってくださる。

田所:こんなことを改めて言うのもアレですけど、芸人さんが名前を出してくださるということは、基本的には愛しかない。そこに関しては感謝しかないです。

ただ、芸人さんのイジリではなく、一般の方々からの「『キングオブコント』で優勝したのに…」とか「消えたんじゃない」みたいな言葉には、考えるところがあります。

僕らがどうと言うよりも、今後「キングオブコント」を目指す後輩に悪い。その思いはありますし、申し訳ないというか忸怩たる思いもあります。

関町:ただ、優勝する前は本当に仕事がなかったので、今でも優勝の影響というか、効果はものすごくあるんです。新型コロナでしんどい状況にはなっていますが、ただ、基本的には劇場出番は以前よりすごく増えてますし、しっかりと変化はあった。

ただ、いわゆるメディア露出みたいなところがないと、なかなか仕事をしていることが見えづらいところがあるのも事実ではありますしね。

田所:こういう言い方をすると語弊があるかもしれませんけど、去年の4月、5月とか緊急事態宣言が出て毎日休みになった時、実は、ワクワクする自分もいたんです。

なかなか伝わりにくい感覚かもしれませんけど、今までやってた仕事がなくなった。こうなったら、何にしても、開き直るしかない。

前あった仕事を戻すというよりも、新しいものを模索する。その貴重なチャンスだとも思ったんです。

実際、コンビとして新たにYouTubeを始めましたし、個人的には絵が好きなので絵を描いてSNSにアップもしました。

もちろん、収入という部分では厳しくなりましたし、世の中としても本当に大変なことではあるんですけど、創作という意味では有意義な時間になったと感じています。

いろいろやってみようと思う中で、豆苗を育てて豆苗アートを作るということもやってみました。ま、それだけはマジで何のプラスも見出せませんでしたけど(笑)、そうやって、いろいろトライできたことは無意味ではなかったと思っています。

仕事をしたいと思っても、その思いだけでできるものではない。そして、今はそういう状況でもない。

でも、そういう時期だからこそ、いろいろなことを考えられたのは事実ですし、それ自体がすごく楽しくもありました。

関町:いやらしいことを言うと、優勝後に舞い込んできたような、お金のいい仕事は減ってきました(笑)。企業案件というか、大きなものは少なくなった。優勝してからの4年半ほどでそういう変化はあったと思います。

でも、先ほどもお話をしたように、優勝以前は本当にヒマだったし、2016年初のテレビ出演が「キングオブコント」決勝という状況でしたからね。そこから考えると、今でも恵まれていると感じています。

田所:あとね、僕らは高校からの付き合いなので、今さら新たな発見もないのかなとも思っていたんですけど、新型コロナ禍で相方の新たな一面を見ることもできました。

ネタは僕が作っていることもあって、僕のイメージとして、相方は自分から発信しないタイプだと思っていたんです。

その人間が新型コロナ禍で動きを封じられる中、何をするのか。それを見ていたんです。

そこでやったのが、インスタライブを使っての熱帯魚飼育の配信だったんです。無限に選択肢がある中、よりによってそれかと(笑)。

関町:いやいや、こんなご時世だけに、何をしたらみなさんの癒しになるのかなと思って、そこを考えた結果、行きついたのが熱帯魚の映像配信だったんです。

田所:心穏やかになる薬を作っている科学者が、一番マッドサイエンティストだったみたいな恐ろしさがあるけどな(笑)。

確かに、今の世の中は、先が見えない。こういう取材をしていただく中で、今、一番難しい質問は「今後の目標は?」だとも思います。どうなるか本当に分かりませんから。

でも、そういう中だからこそ、逆に基本に立ち返ると、僕らはとにかくコントが好きでここまでやってきたんです。

「本業は何ですか?」と尋ねられたら「コントです」と答えます。

なので、この先、歳を取ってもコントだけは続けられるように。そのためには、僕らのコントを見たいと思ってくださる方がいてくれることが必要ですし、そのためにやっておくべきことはやっておかないといけないなと思っています。

関町:60歳、70歳になっても「シティボーイズ」さんみたいに待ち望んでくださるお客さんがたくさんいてくれる。そんな形になったら最高だと思います。

田所:それが理想ですよね。

なんか、すごく崇高なことを話してるみたいになりましたけど、まずは今日をどうやって乗り切るか。それが大切ですから。

気がつけば、家でワクチンのニュースをものすごく一生懸命見てますもんね(笑)。なんとか今を踏ん張って、先を見据えたいです。

(撮影・中西正男)

■ライス

1983年3月2日生まれの関町知弘(せきまち・ともひろ)と82年10月28日生まれの田所仁(たどころ・じん)が2003年コンビ結成。ともに東京都出身。NSC東京校9期生。同期は「ハリセンボン」「しずる」など。吉本興業所属。「キングオブコント2016」王者。東京NSC東京校の同期である「しずる」「サルゴリラ」、脚本家・中村元樹氏との演劇ユニット「メトロンズ」の第1回公演「副担任会議」(4月21日~25日、東京・赤坂RED/THEATER)を行う。同公演は有料配信の形でも見ることができる。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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