オジサン雑誌が繰り返す「コレステロールは下げる必要がない」は本当か【医学論文に訊いてみた】
オジサン雑誌は「コレステロールは高めでOK」がお好き
オジサン向け雑誌の健康記事で高血圧と並んで定番なのが、「コレステロールは高くても良い」でしょう。曰く「コレステロールは細胞を作るのに必要だ。だから薬で下げると血管も脆くなる」、そんな感じでしょうか。
では本当にコレステロールは高くても良いのでしょうか?
「論より証拠」。次のグラフをご覧ください。
40歳から69歳で、心筋梗塞や脳卒中などの血管病を起こしたことのない、日本人約8000人を長期間観察した結果です。
「悪玉コレステロール」と呼ばれる「LDLコレステロール」が高くなるほど、その後、心筋梗塞などの冠動脈疾患を起こすリスクが上がっていました。
「悪玉コレステロールが高い」のはやはり良くないのです。
「コレステロール値が低いから死亡リスクが上がる」のか「健康状態の悪い人はコレステロール値が低い」のか
「いや、コレステロールが低い方が死亡リスクが高いというデータがある」。これも「コレステロール高くて良い」派の常套文句ですね。
でもこれ、「コレステロールが低くて健康な人」と「不健康でコレステロールが下がった人」をごっちゃにしているのです。後者の典型は「ガン」と「栄養失調」。
ガンは異常成長するのに大量のコレステロールを使うため、ガン患者では一般的にコレステロールが低くなります(逆に言えば、何もしていないのにいきなりコレステロールが下がったらガンにご用心を)。
「栄養失調」は食べてないから当然、コレステロールは低い。そして栄養状態が悪いから、当然、早死にしやすくなります。衰弱して食が細っている人も同じです。
コレステロール値が低くて早死にするのは、多くはこのような別の疾患を持たれた方なのです。
そしてこう言う人たちを一緒にして解析すると「コレステロールが低い人は死亡リスクが高い」という現象が現れるわけです。この点は多くの専門家も指摘しています。
日本人でもコレステロール値を下げた方が冠動脈疾患は減る
そして高いコレステロールは薬を使って下げた方が、冠動脈疾患が減ることも証明されています。下のグラフをご覧ください。
日本で実施されたMEGA(メガ)という非常に有名な試験です。
コレステロールの高い人を5千人近く集め、食事だけでコレステロールを下げるグループと、それに加え「スタチン」というコレステロール低下薬を併用するグループの2群に分けました。
その結果、コレステロール低下薬「スタチン」を飲んだ方が、冠動脈疾患になる確率を0.67倍に減らしていたのです。
この試験が発表されたのは2006年。この時点で「日本人でも高コレステロールはスタチンで下げると良い」と結論が出ているのです(細かい論点はさておき)。
きちんと勉強されているドクターならばまず間違いなく、全員がこの結果をご存じのはず。それほど有名な臨床試験です。
そしてもう一言加えると、医学記事作成に携わる人たちにとっても「知らなかった」では済まされない「公知の事実」ではないでしょうか。
最後に
いかがでしたか?
今回は最新情報ではありませんでしたが、知っておいて損のない医学データをご紹介しました。
コレステロールについては次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。ではまた!
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本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。またこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。