深刻化する中国スモッグ問題 空港閉鎖で2万人が立ち往生
「毒霧」とも称される中国の大気汚染は、改善するどころか悪化の一途をたどっています。
週末(3日)、中国四川省・成都の国際空港がここ数年で最悪のレベルのスモッグに覆われ、およそ10時間閉鎖状態となって、2万人以上が立ち往生しました。
大気汚染をあらわす指数(Air Quality Index)は、成都で280となり「極めて健康に良くない」とされるレベルに達した一方、北京近郊では「極度の危険」を示す875まで上昇したとのことです。空が真黄色に染まり、ある場所では視界は10メートルも利かない状態でした。
スモッグの由来
スモッグという言葉は、「スモーク(煙)」と「フォッグ(霧)」からの造語で、元々は産業革命時のイギリスの大気汚染に対して、ロンドンの医師H. A. デ・ボーつけた名前でした。
ロンドンの場合もそうでしたが、スモッグは特に冬に発生することが多いのです。それは、暖房の使用が増加するために、燃料となる石炭等を燃やすことで、大気中の汚染物質が増えるためです。また、冬の空気は冷たく重いので、汚染された空気が地面付近にたまりやすいことも原因です。なお、イギリスでは1952年12月に発生したスモッグにより、1万人以上が亡くなりました。
中国で行われている対応策
中国では、工場からの煙の規制や車両の使用制限など、汚染物質の排出を減らす努力を行っていますが、その他にも吸う空気をきれいにしようという、少し地道で涙ぐましい努力もされています。
世界の空気缶
たとえば、世界の国々の空気をスプレーに入れた空気缶が売られています。例えばカナダの空気缶だと7.2リットルで約1,800円、ニュージーランド産だと7.7リットルで約3600円で取引されているようです。後者は180回吸引可能で、計算すると一吸引約20円。このように高いにも関わらず、販売会社によると8カ月間で1万缶も売れたとのことです。
巨大空気清浄機
またオランダ人エンジニアが考案した、高さ7メートルの巨大な屋外空気清浄機によって空気の浄化を試みたこともありました。しかし残念ながら思ったような効果はなく、呼び名が「スモッグ フリー タワー」から、「スモッグ ウォーニング タワー(スモッグ警鐘塔)」に変わってしまったようです。
ミストキャノン
そこで今注目されているのは、「ミストキャノン」と呼ばれる、移動式の空気清浄装置です。水のミストを吹きかけ、汚染物質に付着させることで地面に落とすという方法です。元々は工事現場や炭鉱などで、ダストを減らすために使用されていました。
深刻化するスモッグ問題
スモッグは冬の深まりとともにひどくなります。中国では毎年スモッグが原因で4,000人が死亡しているとも言われていますし、北京のスモッグに抗生物質が効かない「スーパー耐性菌」が含まれていて、感染すると治療薬がないとする研究も発表されています。
年々深刻化する大気汚染問題と、経済発展とのジレンマの中で、中国は今後どのような対策を行っていくのでしょうか。