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ビッグネームの引退が続くJリーグ。天野純の言葉から、さらに輝く期待の”サーティーズ”を探る。

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

今年のJリーグも残りわずかですが、阿部勇樹(浦和レッズ)、玉田圭司(V・ファーレン長崎)、大久保嘉人(セレッソ大阪)など、これまで歴史を築いてきたビッグネームの今シーズン限りでの現役引退が、次々と発表されています。

ただ、そうした選手たちのキャリアを見ても、30代になって輝きを増す選手たちが増えています。これまでJリーグのMVPも2012年の佐藤寿人(当時・サンフレッチェ広島)をはじめ2013年の中村俊輔、2014年の遠藤保仁(当時・ガンバ大阪)、さらに3年続いた川崎勢の中村憲剛、小林悠、家長昭博も30代での受賞でした。

偉大な先輩たちの輝かしいキャリアを励みに、さらなる高みに挑んでいる選手の一人が横浜F・マリノスの天野純です。

「やっぱり35歳あたりで(中村)憲剛さんだったり、シュンさん(中村俊輔)、あとは家長選手など、JリーグMVPになったりしています。自分も今年30になりましたけど、まだまだ、もっとピークをそのぐらいに持って行くように取り組んでいきたいと思っています」

マリノスのアカデミーで育った天野はトップ昇格がかなわず、順天堂大学で成長を遂げて憧れのクラブに加入を果たしました。

そこから徐々に出番を増やして、2018年には日本代表にも選出。2019年の7月にはベルギー2部のロケレンで初めて欧州サッカーを経験しています。そこから世界がコロナ禍になり、ロケレンの深刻な財政難に伴う破産など、悪い状況も重なる中で、昨年の夏マリノスに復帰しました。

主力だった天野をもってしても、アンジェ・ポステコグルーのアタッキングフットボールが浸透し、すでにベースのあるチームで主力に割って入るということは容易ではありませんでした。それでもACLの上海上港戦で90分に劇的な決勝ゴールをあげるなど、しばしば印象的な輝を見せた天野は今年、マルコス・ジュニオールなど強力なライバルと競い合いながら、リーグ戦32試合に出場、3得点を記録しています。

「そう言った選手たちがいるからモチベーション高く日々を過ごしているところがあるので、もっともっと成長したいなと思っています」

今年の夏にはポステコグルー監督がスコットランドの名門セルティックに招聘されて、松永英機暫定監督を経て、ケヴィン・マスカット監督に引き継がれたマリノス。川崎との首位争いで奮闘も及ばず、現在、残り2試合で2位でのフィニッシュを目指す状況です。

天野は前節で敗れた浦和レッズの台頭など、来シーズンの上位争いがますます激しくなることが予想される中で「レッズも監督が代わったりして、とても良いサッカーを展開してきます。僕たちはアンジェが入ってきてからサッカーが変わって、ここまで積み上げて、もう一歩、常勝軍団になるためには壁を破らないといけないところに来ている」と語ります。

「今少し足踏み状態になってはいますけど、もう1ランクというところ、一概に何がとは言えないですけど、そこを破って常勝軍団になっていかないと、競争力が非常に高くて上がってきているので。優勝争いするためにはそこをフォーカスしていかないといけないと思います」

マリノスがチームとして壁を破ることは大事ですが、天野はそこの中心にいるために「やっぱり圧倒的な存在というか、自分のところに入ったら違うを生み出せる。もちろん結果もそうですし、相手から怖がられる選手になりたい」と意気込みます。

「そこに到達するためにはまだまだ足りないことも山ほどある。そこは自分の中で整理できているつもりなので、そこを伸ばして行きたい」

天野純のほかにも、30代でさらなる輝きが期待される選手は数多くいます。名古屋グランパスの吉田豊は31歳ですが、現在のJリーグで最も存在感のあるサイドバックの一人と言えるでしょう。Jリーグを制覇した川崎の登里享平も早生まれの吉田より学年は1つ下ですが、同じく31歳。ポジショニングや戦術眼に磨きがかかり、川崎の連覇を語るのには欠かせない一人です。

天野が来シーズンの強力なライバルの1つとしてあげた浦和レッズにはGKの西川周作がいます。今年3月には4年ぶりに日本代表にも選ばれた西川は35歳になっても向上心を失うことなく、19歳の鈴木彩艶と1つのポジションを争っています。東に西川がいれば、西にはガンバ大阪の東口順昭がいます。同じ35歳ですが鋭い反応は相変わらずで、パナスタでは神がかり的というより、もはやサポーターから神として崇められる存在です。

そして現在3位のヴィッセル神戸には日本代表の大迫勇也が加入。31歳の大迫はクラブと代表の行き来の中で行動制限のある中でも、徳島戦と横浜FC戦で連続ゴールをあげるなど、実力通りの結果を残しはじめています。大迫をはじめ酒井宏樹(浦和レッズ)や長友佑都(FC東京)など、日本代表のJリーグ復帰も話題になった今年ですが、そうした流れも刺激にしながら、30代になってさらに輝を放つ選手たちの出現に期待したいところです。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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