3年で東京五輪。女子7人制日本代表・稲田仁新ヘッドコーチが心境明かす。【ラグビー旬な一問一答】
2020年のオリンピック東京大会を目指す「サクラセブンズ」こと女子7人制ラグビー日本代表で、稲田仁・新ヘッドコーチが就任した。
2016年11月からヘッドコーチ代行となり、今年4月にはワールドラグビー女子セブンズシリーズ 2017-2018 コアチーム予選大会(香港)で優勝していた。 7月23~26日は、若手を育成する女子セブンズユースアカデミー(東京)に参加。期間中の25日、共同取材に応じた。
以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
――肩書きから「代行」が取れた。
「やっていることは以前とあまり変わらないですが、覚悟はできてきたかなと。リオが終わってからは、『当面、代行。昇格大会(コアチーム予選大会)などの結果を踏まえて…』とは言われていました。代行が取れるかどうかというより、目の前のことに必死にやってきました」
――ここまでヘッドコーチを務めてきて、学んだこと、気づいたこと。
「ラグビーで勝つことを目指してやっているのですが、世界のトップに勝つためにはラグビーをいっぱい練習するだけだめ。リカバリー、栄養、分析も含め、全部をレベルアップさせる必要がある。色々なプロフェッショナルな方に相談したりして、最高のプログラムを作っていく。それもヘッドコーチの大きな仕事だと思っています」
――東京大会まであと3年。選手には。
「3年後はすぐにやって来ると思うので、計画的に、いまやるべきことを丁寧に1個ずつつぶしていこう…。オリンピックの直前だけやればいのではなくて、1回1回の練習、食事、すべての質が最後の結果に繋がる…。このことは毎日、話しています」
2015年から同代表のコーチとなり、2016年にはオリンピックリオデジャネイロ大会へも参加。もっとも結果は10位に終わっている。
共同取材では、当時の準備に関する質問も飛んだ。次の東京大会でメダルを掴むにあたり、過去の反省をどう活かすのだろうか。
――前回大会を受け、新チーム発足の際に気を付けたことはありますか。
「選手の主体性、選手とのコミュニケーションの取り方についてです。いまはリオに行ったメンバーをリーダーに置いていますが、選手とスタッフの考えていることがマッチしていくように、リーダーとのコミュニケーションは頻繁に取っています。そこは(リオデジャネイロ大会前と)変わったところです。
オリンピックへ行ってみて気付いたのですが、(会場施設などの構造上)大会が始まると、コーチが選手と話すこともできない状況になったりもします。その時にリーダーを中心になってやっていけるようにするには、時間がかかるかなと思いました」
――前の大会前は、自衛隊で訓練をするなど精神面と運動量の強化を重視していた印象です。
「体力、精神に関しては、リオに行った選手とそうでない選手に差があると思っていて。今後は、選手によってアプローチを変えていく必要もあると思います。成熟の度合いは選手によって違うのですが、気合いや根性でやらなくてはいけない選手もいれば、次の段階に進める選手もいる」
――「ディフェンス」のなかの「タックル」をきちんと突き詰める。
「結局、1個のタックルを外されると、どんなディフェンスラインを敷いても…という部分がある。タックルスキルだけではなく、まっすぐ走ってきた相手を倒せる筋力ですとか、1個ひとつのことをちゃんとやっていく必要がある」
――リオへのアプローチを振り返って、反省している点は。
「失敗だったとは思わないのですが、前回までは時間がない分、いろんなことを急ピッチでやってきたという印象があって。東京に向けては、3年間をかけて1個ずつのことをちゃんとやっていく。いまであれば『タックルでちゃんと相手を倒す』ということをやっているのですが、リオまでの間はそこまで細かくできなかったところもある。時間を割いて、1個ずつ土台を作っていこうと考えています」
日本開催のオリンピックで指揮を執る。その重圧に関しては、「私自身、指導者としての経験も他の方と比べて短い。そのなかでチャンスをもらえた。選手と一緒に、思い切ってチャレンジしたいと思っています」。タックルから栄養学まで万事にコミットし、緻密なプログラムを構築したいという。
「『トリプルアクション――相手が1回動く間に3回仕事をする――』と『プレッシングセブン――攻守とも7人でプレッシャーをかける――』という2つの大きなキーワードを出しています。それをするために、色々なことをしている」