強敵倒すのに必要な「プラスワン」とは。イーグルス沢木敬介監督が指摘。【ラグビー旬な一問一答】
優勝候補に迫った。
5月18日、東京・秩父宮ラグビー場。リーグワン1部レギュラーシーズンで4位となった横浜キヤノンイーグルスは、同1位の埼玉パナソニックワイルドナイツに肉薄した。
今年2度あった直接対決でいずれも大敗していたなか、一時リードを奪うなど17―20と接近。今季の国内シーンにおけるベストゲームのひとつを演じたと言える。
その5日後、就任4シーズン目の沢木敬介監督が熱戦を振り返った。都内の練習場で取材に応じた。
壁を乗り越えるのに必要な「プラスワン」とは。実例を挙げて語った。
以下、単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
——改めて、準決勝のことを伺います。ワイルドナイツの防御を攻略するさまは見事でした。後半13分の一時勝ち越しとなるトライシーンなどいくつかの場面で、ワイルドナイツのタックラーの枚数が足らなくなるシーンがありました。少なくとも、今季の試合で似た状況になったことはないはずです。
「そうなる(防御に隙間が生じる)ことは、ほぼないよ。ただ、相手に判断ミス、ノミネートミスが起こりやすくなるタイミングがある。…その辺をあまり詳しく言ったらさ、次に戦う時に…あれだから。そこに気づいているチームはあまりないと思う。
この前は、自分たちのプランはやれていたんだけど、流れを決める時の『プラスワン』が…。いいディフェンスをしていても、ひとつのタックルミスで失点に繋がる。それを止めていれば、何もなかったことになるかもしれない。
例えば、(相手スタンドオフの松田)力也がラインブレイクしたところ(4点リードで迎えた後半19分の場面。最後はダミアン・デアレンデのトライを決められ再逆転を許した)。その前の2フェーズはしっかりと止められていたけど、ノミネート、タックルのミスで、ゲームが決まる。
…そういう、試合のなかの色々なところに、『プラスワン』があるのを学ばなきゃいけない。もうひとつプレッシャーをかけたり、もうひとつ流れを変えたり、引き寄せたりするというマインドでいなきゃいけない」
——イーグルスが鋭く攻め込みながら、ワイルドナイツが粘って守り抜くシーンもありました。
「(ワイルドナイツは)経験もあり、落ち着いている。パニックになりづらい。去年のファイナルは、パナがパニックになっていたよね。自分たちの簡単なミスから慌てて…(クボタスピアーズ船橋・東京ベイに15―17で惜敗)。うちはああいう状況を作る前に『プラスワン』のミスで…。逆転した後に『プラスワン』がある。そこの差だね」
——報道では、試合後のロッカールームで沢木監督が涙を流したことになっていますが問題ありませんか。
「泣いたことにしておいていいよ。面倒くさいから。…俺が泣くわけねぇだろ」
25日、秩父宮で3位決定戦に臨む。2季連続の挑戦で、相手は前年度と同じ東京サントリーサンゴリアスだ。
——昨年すでに史上初の3位に輝いています。外野からは、今度の試合へのモチベーションを作るのが昨季以上に難しいように映ります。
「結構、ダメージが残っている。パナの時(準決勝で)、出し切ったから。あれで勝っていたとしてもダメージはあったと思うけど、これで優勝するにはファイナルでもう1回いいパフォーマンスを出さないといけない。だから、(将来に向けて)そこにこだわる。
ここで俺が(モチベーション作りが)難しいなんて言ったら、あれだから…。そんなこと、口が裂けても言わない。
ちょっと前までは、上位チームからしたら星勘定のできる相手だったんだよ? 勝って当たり前って。ただいまは、トップのチームにも嫌がられるチームに成長してきている。(進歩は)早い方だと思うけどね。
ただ、本当にチャンピオンになるためには『プラスワン』の駆け引きが大事になる。
コントロールするために必要な締めどころが、『プラスワン』。それがアタックのシチュエーションなのか、ディフェンスのシチュエーションなのか、セットピースなのか、色々あるのよ」
今年度のラストゲーム。ダメージの残った身体で勝負の綾を掴めるか。