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バルセロナ×リーベル。クラブW杯決勝で注目したい3つのマッチアップ

河治良幸スポーツジャーナリスト

3年ぶりの日本開催となったクラブW杯もいよいよ決勝を迎える。負傷のネイマール、体調不良で準決勝を欠場したメッシにも何とか出場の目処が立ち、両チームとも現在考えらえるベストメンバーでの激突が期待できそうだ。

準決勝ではスアレスの見事な3ゴールで広州を破ったバルセロナ。その3ゴールに関しては『スアレスの3ゴールを演出したバルセロナの”崩しのメカニズム”』にまとめたが、そこにメッシとネイマールが加わるバルセロナをリーベルがどう封じ、チャンスを得点に結び付けられるか。

筆者なりの視点で注目するべき3つのマッチアップを厳選した。

【注目のマッチアップ1:ネイマール×メルカード】

“MSN”の中でも特にサイドからの仕掛けを得意とするネイマールだが、対峙するのはアルゼンチン代表の右SBメルカードだ。タイミングの良いオーバーラップからのクロスに定評のあるメルカードだが、守備における対人戦は南米のSBでも屈指の強さを誇る。準決勝で広島が左からなかなかチャンスを作れなかったのも、彼の安定によるところが大きかった。

ともに個の打開力を備える“MSN”にあっても、ネイマールは一度ボールを持ったところからドリブル突破やワンツーでゴール前に侵入するプレーを得意とする。つまり起点になるプレーを封じてしまえば、その後のフィニッシュワークもかなり限定させられるわけだ。

ネイマールの様な選手に対しては本来2対1を維持してチャレンジ&カバーを徹底したいところだが、前線にメッシ、スアレスがおり、中盤からイニエスタが絡んで来る攻撃の厚みを考えればサイドに守備の人数をかけられない。それだけにメルカードの対応が生命線となるのだ。

メルカードには主に守備の働きが求められるめるが、もちろん機を見た攻撃参加も勝負の重要なカギを握る。ネイマールは前からのチェックはそれほどサボらないものの、自陣まで戻って守備に参加することは少ない。メルカードには相手のSBを抜き切らなくても危険なクロスを上げる技術があるため、アーリー気味のクロスをモラやアラリオに合わせる形は普段の試合に増して有効な武器になる。

【注目のマッチアップ2:イニエスタ×クラネビッテル】

この大会を最期にスペインリーグのアトレティコ・マドリーへ移籍することが決まっているクラネビッテル。“マスチェラーノ2世”とも呼ばれる守備的MFの仕事はバルセロナ戦でも多岐に渡りそうだが、特に重要なのはイニエスタの監視だ。

現在は“MSN”の影に隠れがちだが、ほとんどの攻撃がイニエスタを起点としており、ネイマールやメッシが前を向いてボールを持てるのも、この名手が相手のプレッシャーをうまく吸収しながら縦にボールを付けているためだ。左SBから上がってくるジョルディ・アルバの使い方にも長けており、最近は回数こそ減っているものの、準決勝の広州戦で見せた様なタイミングの良い飛び出しも健在だ。

クラネビッテルはポンシオ、サンチェスと共に守備のバランスを取りながら、イニエスタにボールが入るところを見逃さずにチェックしていく必要がある。ただ、イニエスタはバルセロナの中でもボールロストが極めて少ない選手であり、対人戦に強いクラネビッテルと言えども、一発のタックルでボールを奪うことは難しいだろう。

イニエスタが自由にボールを捌けない状況を作りながらパスを通させない、あるいはシンプルにバックパスを選択させる様な対応を続け、周囲にボール奪取のポイントを作っていくことで、バルセロナの攻撃リズムを崩したい。

【注目のマッチアップ3:マスチェラーノ×モラ】

基本的にはバルセロナがリーベル陣内でボールを持つ時間帯が90分の大半を占めそうだが、リーベルにも得点のチャンスが無いわけではない。自陣のやや高めの位置でパスカットやセカンドボールの奪取に成功すれば、クラネビッテルやポンシオから速いカウンターで裏を狙った攻撃を仕掛けられる。

そこでロングパスやアラリオのポストプレーから俊速のモラがディフェンス・ラインの背後に抜け出せば、GKクラウディオ・ブラーボと1対1に持ち込むことも可能だ。しかし、バルセロナにはハイラインの監視人とも言えるマスチェラーノがいる。

広州戦でもリカルド・グラールのキープにピケとブスケッツが引き付けられ、その外側からパウリーニョに飛び出されたシーンがあったが、アルゼンチン代表DFが迅速なカバーリングでシュートを打たれる寸前にクリアし、事無きを得た。

リーベルの下部組織であるマスチェラーノは人に対する強さが注目されがちだが、高い集中力と卓越した観察眼に裏打ちされたカバーリングはマスチェラーノの真骨頂であり、バルセロナのハイラインを支える、“動く防波堤”とも言えるものだ。

しかし、コパ・リベルタドーレス優勝の立役者であり、一度は中東クラブへの移籍が決まりながら、クラブW杯のために残留を決めた小兵のストライカーは南米特有の駆け引きの中でもフィニッシュのチャンスを見出す能力に優れ、シュートのバリエーションも豊富だ。彼が数少ないチャンスの中で、マスチェラーノの予測を上回るプレーを90分の中で1つでも2つでもできれば、勝機が転がってくるはずだ。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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