再び大雨に警戒 大雨警報などの発表規準は市町村ごとに決められている
関東地方では、本州の南岸に停滞する前線や低気圧の影響で、これから明日明け方にかけて、雷を伴った激しい雨の降る所がある見込みで、一週間前の被災地等では警戒が必要です。また、マリアナ近海で台風20号が発生していますが、ここは、日本に大きな被害をもたらす台風の発生場所ですのでシルバーウィークは台風情報に注意が必要です。
茨城県常総市の大雨警報と大雨注意報の発表基準
一週間前の大雨で大きな被害が発生した茨城県常総市では、1時間雨量が30mm(土砂降りの雨)か土壌雨量指数が101のとき大雨注意報が、1時間雨量が60mm(滝のような雨)か土壌雨量指数が147のとき大雨警報が発表されます(表1)。大雨特別警報は、府県程度の広がりでの50年に一度の大雨を対象としていますので、常総市だけの値での基準で発表されるわけではありませんが、常総市で50年に1度の値と計算されている48時間で283mmの雨や3時間で112mmが参考にされます(表2)。また、記録的短時間大雨情報の茨城県の発表基準の1時間で100mmの雨も目安となります。
参考:
全国の雨に関する各市町村の50年に一度の値一覧(気象庁HP)
市町村ごとに大雨警報等の発表基準が決められている。
茨城県常総市の例のように、大雨警報や大雨注意報の発表基準は原則として市町村ごとに決められています。ただ、例外として、特別区である東京23区は区ごとに、気候が大きく異なる市町村では、市町村をいくつかに分割した地域を対象として発表されます。例えば、静岡市は、北部(葵区の北部)と南部(葵区の北部以外の区)に、浜松市は北部(天竜区)と南部(天竜区以外の区)に分けての発表です。
大雨警報等の細分発表は長崎大水害から
大雨警報級の強い雨は、かなり地域的にかたよっていることが多いために、天気予報で用いられている北海道や沖縄の各支庁や都府県をいくつかに分けた予報区(一次細分)では、そのすべてで基準を超える雨が降ることはまれです。
昭和57年7月は、長崎県(島嶼部を除く)では梅雨前線による大雨警報が5回発表され、5回目には、長崎市で日降水量が448 mm、長与町で1時間降水量が187 mmという記録的な大雨で、長崎大水害が発生し、大きな被害がでました。
長崎大水害の前の4回とも、どこかで大雨警報基準の雨が降っていますので、警報としては満点ですが、長崎市付近では1回しか大雨警報級の雨は降っていません(図のハッチ部分が大雨警報基準の雨が降った地域)。このため、長崎市民にとっては、今回も空振りかと思ったときの大雨でした。
気象庁では、警報の信頼性を高め、利用価値をあげるために、さらに地域細分(二次細分)をして警報を発表することにしました。
平成16年に相次いだ災害から二次細分が市町村ごとに
大雨警報等の二次細分は、当初は、複数の市町村をまとめた地域でした。しかし、平成16年に相次いだ災害(新潟・福島豪雨、福井豪雨、台風23号など)をきっかけに、自治体等の調整や技術開発などの準備期間をへて、平成22年5月から原則として市町村ごとの発表となっています。
なお、テレビや新聞等の報道では、放送時間や紙面の関係で、予め決められた「市町村等をまとめた区域」を使うことがあります。例えば、常総市は、下妻市などと一緒にまとめた「県西地域」が使われます。
図の出典:饒村曜(2012)、お天気ニュースの読み方・使い方、オーム社。