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戸崎圭太騎手と、安田記念勝ちのダノンキングリーとの裏話

平松さとしライター、フォトグラファー、リポーター、解説者
安田記念勝ちのダノンキングリーは昨年の同レースでは戸崎圭太騎手が騎乗していた

大怪我からの復帰に関係していたダノンキングリー

 先週6月6日に行われた安田記念(GⅠ)はダノンキングリー(牡5歳、美浦・萩原清厩舎)の優勝で幕を閉じた。同馬は前年も同GⅠに挑戦。その時、騎乗していたのは同馬とのコンビで共同通信杯(GⅢ)や毎日王冠(GⅡ)勝ちのある戸崎圭太だった。

19年の共同通信杯を勝ったダノンキングリーと戸崎
19年の共同通信杯を勝ったダノンキングリーと戸崎

 同騎手は2019年11月に浦和競馬場で落馬。右肘を開放骨折するなど大怪我を負った。これにより長期休養を余儀なくされた彼が、手術、リハビリを終えて競馬場に戻ってきたのは約200日後。その直後の6月6日に復帰後初勝利を飾り、翌7日に手綱を取ったのがその安田記念のダノンキングリーだった。結果は7着に終わったが、当時、鞍上はこのレースの持つ大きな意味を次のように語っていた。

 「ダノンキングリーの萩原調教師は、僕が休んでいる間、何度も連絡をくれて『間に合うなら安田記念で乗ってもらうから』と言ってくださいました。これがリハビリをする上で大きな励みになり、モチベーションを保つ事が出来ました」

今週末のエプソムCでは……

 本来、復帰はもっと後ろにズレこんだかもしれなかったが、ダノンキングリーの騎乗依頼をもらえた事で、5月の終わりには競馬場に戻り、6月の頭には勝つ事が出来たのだ。

更に物語には続きがあった。その安田記念から1ケ月と少し後の8月16日、戸崎はサトノアーサーに乗って関屋記念(GⅢ)を優勝した。これも5月には復帰出来ていた事と無関係ではないだろう。ちなみに、その勝利は戸崎にとってダノンキングリーで制した前年の毎日王冠(GⅡ)以来となる重賞制覇だったのだ。

サトノアーサーと戸崎
サトノアーサーと戸崎

 また、久しぶりの美酒に酔ったのは鞍上ばかりではなかった。鞍下のサトノアーサー自身も1着でゴールしたのは久しぶりだった。同馬がその前に勝ったのは2年以上も昔の話。最後の勝利は18年のエプソムC(GⅢ)で、この時もコンビを組んだのは戸崎だったのだ。

 「お互い久しぶりの優勝で、何か不思議な縁を感じました」

 レース後、戸崎がしみじみとそう語ったのが忘れられない。

 さて、今週末、まさにそのエプソムCが行われる。東京競馬場、芝1800メートルのこのGⅢで今年、戸崎が騎乗を予定しているのはサトノアーサーと同じ里見治オーナー(名義はサトミホースカンパニー)のサトノフラッグだ。果たして今年はどんなドラマが待っているだろう。結果がどうなるかは分からないが、まずは怪我無く無事にレースを終えた上での好パフォーマンスを期待したい。

今年のエプソムCで騎乗予定のサトノフラッグ。AJCC(写真)以来のコンビ復活となる
今年のエプソムCで騎乗予定のサトノフラッグ。AJCC(写真)以来のコンビ復活となる

(文中敬称略、写真撮影=平松さとし)

ライター、フォトグラファー、リポーター、解説者

競馬専門紙を経て現在はフリー。国内の競馬場やトレセンは勿論、海外の取材も精力的に行ない、98年に日本馬として初めて海外GⅠを制したシーキングザパールを始め、ほとんどの日本馬の海外GⅠ勝利に立ち会う。 武豊、C・ルメール、藤沢和雄ら多くの関係者とも懇意にしており、テレビでのリポートや解説の他、雑誌や新聞はNumber、共同通信、日本経済新聞、月刊優駿、スポーツニッポン、東京スポーツ、週刊競馬ブック等多くに寄稿。 テレビは「平松さとしの海外挑戦こぼれ話」他、著書も「栄光のジョッキー列伝」「凱旋門賞に挑んだ日本の名馬たち」「世界を制した日本の名馬たち」他多数。

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