「ピクミン」の新作スマホゲーム「ブルーム」 「ポケモンGO」との違いは
任天堂の人気作「ピクミン」を題材にした新作スマートフォン用ゲーム「Pikmin Bloom(ピクミン ブルーム)」の配信が日本でも始まりました。社会的現象にもなった「ポケモンGO」と同じタイプの位置情報ゲームですが、実際にプレーすると明確な違いがありました。
◇プレーヤーのウオーキング促す仕掛け
「ピクミン」シリーズは、不思議な生物であるピクミンを指揮して、さまざまな謎や仕掛けをクリアしていくゲームです。シリーズ第1弾の発売時(2001年、ゲームキューブ向け)、任天堂の東京支店で同作を手掛けた宮本茂さんにインタビュー取材して、ゲーム性の追求ぶりと、遊ぶ人への徹底した配慮に驚いたことを覚えています。ユニークなゲームで、今回の配信を期待した人も多いのではないでしょうか。
新作の「ピクミン ブルーム」ですが、大ヒットした「ポケモンGO」のナイアンティック社が手掛けたこと、同じ位置情報ゲームであるため、一部ユーザーの間では「ピクミンGO」と呼ばれていました。しかしプレーしてみると「ポケモンGO」とは完全に別物でした。
「ピクミン ブルーム」も「ポケモンGO」も、地図データを使ってプレーヤーのウオーキングを促す「健康志向」は同じです。しかし「ピクミン ブルーム」は、試行錯誤するゲーム的な要素は薄くてその分とっつきやすく、よりウオーキングを促す方に力点を置いています。ある程度はゲームを放っておいても良く、一日を振り返る日記的な機能もあるなど、人によっては「これゲームなの?」と思うかもしれません。
ゲームの流れをもう少し説明すると……。ゲーム内で「ピクミンの苗」をセットし、実際に歩くことでピクミンになり、これを繰り返せばピクミンの数はどんどん増えます。するとピクミンが「フルーツ」を手に入れ、「エキス」に変換されます。この「エキス」をピクミンに与えることで、「花びら」をためられます。そして歩くときに「花びら」を使って実際に歩くと、地図に花が咲くのです。他のプレーヤーの花も地図に反映され、人が集まる場所では画面が「花」満開になります。
効率重視のプレーをすると「ウオーキングをする・歩数をより増やす」という仕掛けになっています。同時に、そこまで無理をする必要性を感じません。1日ごとに歩数と歩いたルートを振り返ってメモも残す機能があるように、朝や夜のスキマ時間に1日数回だけ起動し、少しチェックをして、あとは放置するだけでも成り立ちます。冷静に考えると、謎解きを楽しむ家庭用ゲーム機の「ピクミン」シリーズとは、かなり異なります。
ですが、ピクミンを連れまわせるだけでオッケーと思うユーザーもいるわけです(私のことです)。そして、ピクミンのことを知らない超ライトユーザーも、知識不要で楽しめるわけです。
◇時間奪わず 他のスマホゲームとの共存も
「ゲームらしくない」といえば確かにそうですが、「Wii Fit」や「リングフィットアドベンチャー」などのゲームがヒットしたように、それこそ人の好みでしょう。我を忘れてゲームに時間を費やす「ゲームらしさ」を求める声も一定数あると思いますが、別の声もあるわけです。むしろ、従来の枠組みにないゲームを生み出すかが勝負どころです。
また香川県のゲーム規制条例のように、ゲームに対する否定的な動きも高まっています。従来にないコンセプト、既成概念のゲームの枠を取り払うという意味では、「ピクミン ブルーム」は、面白いところを突いています。1日1時間プレーせずとも長く遊べそうです。
条例への皮肉はさておき「ピクミン ブルーム」にも、さまざまピクミンを集めるなど、ゲームによくあるコレクション的な要素もあります。実際に楽しめるという意味では、広い意味でのゲームだと考えられます。
そしてゲーム的な要素が薄い分、「ポケモンGO」や他のスマホゲームともタイプが重複しません。むしろ、かつての「ポケモンGO」ユーザーの回帰、健康志向のある人も気になる作りになっています。ゲームに費やした時間で差のつく対戦的な要素も今のところはなさそうで、マイペースで楽しめるでしょう。
他のスマホゲームをバリバリ遊んでいても、「ピクミン ブルーム」は時間を奪わないので、共存できそうな点も強みでしょうか。また位置情報ゲームにありがちな「歩きスマホ」の対策も考えられています。
あえて弱点を挙げるとすれば、「マリオ」や「ポケモン」のような、一般層(非ゲームユーザー)の知名度にいくぶん欠けるところでしょうか。とはいえ、健康志向という世間の流行に乗って広がっていけば、面白い展開になるかもしれません。「ピクミン ブルーム」でピクミンのことを知り、家庭用ゲーム機用ソフトの「ピクミン」シリーズに興味を向けることもありそうです。
スマホゲーム市場から、どこまで家庭用ゲーム機市場へ「新規の顧客」を運べるか。社会的大ヒット作の「ポケモンGO」に比べると静かな立ち上がりですが、今後の展開を注視したいところです。