間も無くゴング! WBCクルーザー級タイトルマッチ
WBCクルーザー級タイトルマッチが、今夜、オハイオ州ウォーレンで行われる。チャンピオンのイルンガ・マカブ(左)に、同シルバー王者のタビソ・ムチュヌ(右)が挑む。コンゴ共和国出身の王者と、南アフリカのチャレンジャー。サウスポー同士の一戦だ。
前日行われた計量を、マカブは197パウンド、ムチュヌは198.5パウンドでパスした。
28勝(25KO)2敗のチャンピオンも、23勝(13KO)5敗の挑戦者も、計量会場に自身が保持するベルトを持参していたが、まだ米国内でその存在が知られているわけではない。内容のある勝ち方で、ファンに名前を覚えてもらいたいところだ。
同ファイトのプロモーターは、あのドン・キングである。ここしばらく姿を見せなかったが、自身の故郷であるオハイオ州で怪気炎を上げた。
試合を前に、キングは語った。
「2つの世界戦を含む6試合のタイトルマッチが一夜にして行われるのだから、特別な夜になる。ボクシング界にファンを取り戻すんだ。コロナに負けず、楽しもうじゃないか。素晴らしい日になるだろう。
私の心は常にオハイオにある。フロリダに住もうが、ネバダにいようが、変わらないさ。アメリカ人の為に、この国を改善する為に必死で働いてきた。自分がどこから来たかを忘れたことは無いし、オハイオには数々の思い出があるから、地元に帰って来られたことを嬉しく感じる。人々の為に、一プロモーターとして出来る限りのことをするよ」
選手に白紙の契約書へのサインを命じ、幾人ものチャンピオンからカネを毟り取ってきたキングも御歳90。彼に泣かされたファイターたちは、ほぼ全員が引退した。
「天国へ進むペースが若干遅くなった。ギャングたちに車や家を爆破されたよ。私はそんな歪んだ世の中と戦っている。黒人にはチャンスが無いという現実ともね。だから、刑務所を出て以来、こうして仕事をしているんだよ」
殺人犯として服役中だったキングが、刑務所内のTVでモハメド・アリを目にし、ボクシング界に参入した話はあまりにも有名だ。プロモーターとしての彼の出発点が、オハイオ州クリーブランドだった。
1984年にWBCヘビー級タイトル、1986年にWBA同級王座を獲得しながら、キングとの奴隷契約に泣いたティム・ウィザスプーンは言う。
「色々あったけれど、オールライト・ガイだ。90歳で働いてるってことに関しては、単純に凄いと思う。感心するよ。現役選手がヤツに食い物にされないことを祈るがね」
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キングが久々に手掛ける今回の興行には、メインイベントの他に、WBA正規ヘビー級タイトル、NABAクルーザー級タイトル、NABAゴールドヘビー級タイトル、
NABAウエルター級タイトル、NABAミドル級タイトル戦が組まれた。キングらしいマッチメイクと言える。
さて、どんな試合が展開されるか。