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初日の出を天空から拝む「初日の出フライト」が大人気。実際に乗ってその魅力に迫ってみた

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
富士山とほぼ同じ高さからの初日の出(ANA初日の出フライト)筆者撮影

 2018年、航空業界にとって最初のイベントが初日の出フライト。2018年元旦は、ANA(全日本空輸)は羽田・中部、JAL(日本航空)は羽田・成田、JTA(日本トランスオーシャン航空)は中部・那覇、J-AIRとFDA(フジドリームエアラインズ)は関西、そしてスターフライヤーは北九州、ソラシドエアは羽田、更にエアアジア・ジャパンは中部から初日の出フライトを運航した。

 筆者調べでは8社11便の初日の出フライトが元旦に運航された。ANAが2001年にスタートさせて以来、最多便数での運航(筆者調べ)となったが、各社共に発売初日に完売するなど、新年の特別フライトとして定着した。

初日の出を鑑賞して出発空港に戻る周遊フライト

 通常のフライト(定期便)と初日の出フライトの大きな違いは、初日の出を天空から拝む専用のチャーター便となっており、10便のうち9便は初日の出を鑑賞した後に出発した空港にそのまま戻る周遊フライトとなる(ソラシドエアは羽田を出発して富士山のご来光を鑑賞した後、宮崎に着陸して青島神社で初詣をしてから羽田に戻ったほか、FDAは関西から名古屋・小牧へ飛んだ)。つまり羽田空港発であれば、羽田発羽田行きとなるのだ。そして出発時間も定期便の始発便よりも更に早い朝5時半~6時に出発となるので、羽田空港からの初日の出フライトでは、朝4時~4時半頃に空港に集まることになっている。

羽田空港からの初日の出フライトは朝4時台に集合。東京モノレールの臨時列車が浜松町から2本運行された
羽田空港からの初日の出フライトは朝4時台に集合。東京モノレールの臨時列車が浜松町から2本運行された

 

 また定期便と大きく異なるのは高度。管制と事前に協議した上で通常よりもかなり低い高度で飛行してくれる。定期便でも早朝便であれば日の出を飛行機の窓から観ることもできるが、低い高度の方が神秘的な日の出の光景を目にすることができる。

ANA初日の出フライトでは富士山とほぼ同じ高さからの初日の出

 筆者は、ANAの初日の出フライトを取材させてもらった。朝4時過ぎに羽田空港で搭乗券を受け取った後に搭乗ゲートへ。搭乗ゲートでは晴れ着姿のグランドスタッフとの記念撮影タイムとなっていた。そして朝5時過ぎに搭乗開始となり、5時31分にゲートを離れ、5時48分に羽田空港を離陸した。富士山のご来光を鑑賞するルートの場合は朝6時40分~45分が初日の出の時間となるので、少し余裕を持って出発となった。その後、富士山の北西約80キロの地点(長野県駒ヶ根市周辺上空)の初日の出鑑賞ポイント(天竜ポイント)に朝6時過ぎには到着した。

晴れ着姿のグランドスタッフ(地上係員)
晴れ着姿のグランドスタッフ(地上係員)

 鑑賞ポイントに到着する前後に機内サービスも始まり、おせち風お弁当が提供される。主なメニューとしては、かもスモーク、鮭幽庵焼き、蒲鉾、鰊昆布巻き、子持ち昆布、黒豆金箔松葉、出汁巻き玉子、里芋や椎茸などの煮しめといったお正月らしいお弁当となっていて美味しかった。ビールや日本酒なども機内で無料で提供され、おせちを食べながら初日の出の時間を待つことになる。

おせち風のお弁当が提供される
おせち風のお弁当が提供される
お弁当の中身も豪華でお正月気分を盛り上げてくれる
お弁当の中身も豪華でお正月気分を盛り上げてくれる

 機長からアナウンスが入り「鑑賞ポイントである天竜ポイントで待機経路に入り、右旋回を繰り返して円を描くように待機します。この天竜ポイントは富士山と日の出が同時に観られる場所を計算した結果、最適である場所として選定されました。高度約1万3000フィート(約3960メートル)で富士山(3776メートル)とほぼ同じ山頂の高度で、できる限り美しく富士山の後ろから日の出を鑑賞いただけます」との解説があった。

 鑑賞ポイント到達後は、右旋回を繰り返すことから右側席・左側席の両側から交互に初日の出を鑑賞できるようになっているのも初日の出フライトならではだ。この頃には少しずつ外が明るくなってきた。

初日の出直前の富士山も綺麗
初日の出直前の富士山も綺麗

 そして機内の照明が真っ暗となり、初日の出の瞬間が6時45分頃に訪れる。富士山の横から一気に太陽の光が射し込む瞬間が快感である。眩しい太陽を浴びることで新年を迎えたことを実感する。この瞬間の為に多くの人が早朝集合にも関わらず参加しているのだが、この光景だけは飛行機からでなければ鑑賞できない特別な至福の時間となり、参加者からも大きな歓声が起こっていた。

いよいよ富士山をバックにしたご来光の瞬間。急に光が射し込んで眩しくなる
いよいよ富士山をバックにしたご来光の瞬間。急に光が射し込んで眩しくなる
乗客も身を乗り出して鑑賞
乗客も身を乗り出して鑑賞

 初日の出から約15分後の7時過ぎには完全に明るくなり、その後は八ヶ岳・浅間山・前橋・宇都宮・筑波山の上空を巡って7時49分に羽田空港に着陸した。約2時間の周遊フライトで初日の出フライトが終わった。

飛行ルート
飛行ルート
参加者には搭乗証明書とバームクーヘンやお箸などがプレゼントされた
参加者には搭乗証明書とバームクーヘンやお箸などがプレゼントされた
約2時間のフライトで羽田空港に戻ってきた
約2時間のフライトで羽田空港に戻ってきた

各社によって募集方法も異なる

 初日の出フライトは航空会社によって募集する方法が異なる。ANAやJALでは自社ホームページに初日の出フライトの告知がされ、グループの旅行会社で申し込むことができる。また、JTAやエアアジア・ジャパンなどの初日の出フライトでは航空会社ではなく、旅行会社で企画・販売をしている。スターフライヤーでは、自社ホームページで募集して抽選で無料招待した。

 気になるのが料金であるが、ANAでは窓側席を含む場合は普通席2名で10万円、窓側席を含まない場合は普通席2名で7万円(羽田発の場合)、JALでは窓側席(クラスJ)2名で10万円、窓側席(普通席)2名で8万6000円~9万円(羽田発の場合)となっているが毎年発売初日に完売となる。もちろん窓側席が人気となっている。

 少し気が早いが2019年の元旦、初日の出フライトに乗ってみるのもいいだろう。例年11月に販売開始となる。

(13時20分:FDAの初日の出フライトについての情報を追記しました)

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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