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大岩オスカールが絵本『はじめてアート』を発表。原画を中心とした展覧会を六本木で開催。

新川貴詩美術/舞台芸術ジャーナリスト
大岩オスカールによる絵本『はじめてアート』 株式会社Case 4000円(税込)

 アーティストの大岩オスカールが絵本『はじめてアート』を発表した。主人公は10歳の男の子。その子がアートに触れ、アートについて考え、アートを手がけるといった内容だ。

 なお、この『はじめてアート』が初めて世に出たのは1995年のこと。そしてこのたび、当時の絵とテキストとともに新たに描いた絵も加え、あらためて刊行されることになった。

 28年ぶりのリニューアルについて、ブラジルで生まれ、目下、ニューヨーク在住の大岩オスカールは語る。

大岩 30年近く経ったから、この絵本に描かれてることといまの事情が大きく変わった。携帯電話はあまり普及してなかったし、ゲーム機も進化した。主人公の男の子は写真が好きなんだけど、いまの子どもたちはカメラにフィルムを入れることすら知らない。だからバージョンアップしようと。

 当時、この絵本を読んだ子どもたちは、いまではもう親の世代。だから、あと30年経ったら、もう一回バージョンアップしようかな。孫の世代も読んでくれるといいな。

絵本『はじめてアート』より。キャンバスに絵の具を垂らす、ジャクソン・ポロック独自の技法にチャレンジ!
絵本『はじめてアート』より。キャンバスに絵の具を垂らす、ジャクソン・ポロック独自の技法にチャレンジ!

28年ぶりのリニューアル。新たな絵を加える。

 なお、大岩も三人の子どもに恵まれた。末っ子が16歳だから、もはや「子ども」という年齢ではないけれど。

 では、父の『はじめてアート』について、子どもたちの評判はどうだったのか? 大岩は振り返る。

大岩 あまり人気がなかった(笑)。幼い頃は子どもたちを美術館によく連れて行ったけど、あまり興味なくていつも退屈してた。現代アートって、ただ石が置いてあったり、四角い箱があったりするから、つまんなかったみたい。だからこの絵本を見せても、「ああ、また?」って感じで。

絵本『はじめてアート』より。テレビモニタを組み合わせたナム・ジュン・パイクのロボットとともに自撮り!
絵本『はじめてアート』より。テレビモニタを組み合わせたナム・ジュン・パイクのロボットとともに自撮り!

 新しいページを追加するにあたり、大岩自身もこの絵本を久しぶりに開いたという。

大岩 懐かしいというより、まだ20代の頃の自分と再び出会えたと思った。25歳の時にブラジルから日本に来て、東京の下町に暮らして3年か4年経った頃に描いたのがこの絵本。日本での生活がまだ短い時期の、これから現代アートの世界を目指そうとしている20代の自分を思い出した。

六本木ヒルズで個展を開催

 今回、絵本の刊行に際して、展覧会も開催される。森美術館のミュージアム・ショップが運営する六本木ヒルズA/Dギャラリーでの「大岩オスカール個展 絵本&版画 出版記念」だ。絵本の原画に加え、新作の版画も展示される。これまでの大岩オスカールらしい、ユーモラスでカラフルな作品が揃う展覧会だ。

大岩オスカール
大岩オスカール "Light Rabbit meet Shadow Cat 1" 2023 Print Image cortesy:東京画廊

大岩 前からファミリー向きの楽しい展覧会を開きたいと思ってた。でもこの3年間、パンデミックや隔離生活をテーマにしたモノクロ絵画を制作してて、ちょっと怖い絵ばかりだったから、実現できなくて。やっと久しぶりに楽しい絵画を描けた、つまり普通に戻ったと思う。

 それではオスカールさんに、最後の質問。この絵本について、何か他にいいたいことはありますか?

大岩 この絵本、小学校の教科書に使ってほしいよね。

主な個展に「Oscar Oiwa」(ハンガーアートセンター/ギャラリー、ブリュッセル、2019年)、「光をめざす旅」(金沢21世紀美術館、2019年)など多数。 photo takasix
主な個展に「Oscar Oiwa」(ハンガーアートセンター/ギャラリー、ブリュッセル、2019年)、「光をめざす旅」(金沢21世紀美術館、2019年)など多数。 photo takasix

大岩オスカール『はじめてアート』

大岩オスカール個展 絵本&版画 出版記念

会期:2023年2月23日(木・祝)〜3月21日(火・祝)

時間:12時〜20時

休み:3月14日(火)

会場:六本木ヒルズA/Dギャラリー

料金:無料

美術/舞台芸術ジャーナリスト

出版社に勤務した後、執筆活動を開始。国内外の現代アートをはじめ演劇やダンスなど舞台芸術に関して、雑誌や新聞、ウェブメディアなどに執筆。主な著書に『残像にインストール 舞台美術という表現』(光琳社出版)、主な編書に『蓬莱山 蔡國強と大地の芸術祭の15年』(現代企画室)などがある。早稲田大学第一文学部卒業、同大学院情報通信専攻修了。多摩美術大学演劇舞踊デザイン学科非常勤講師。プロフィール画像撮影:松蔭浩之

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