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「ラグビー日本代表は日本人じゃなきゃ…」なんて言っている人、まだいるんですか?【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
球を持つヘル ウヴェはトンガ出身の日本人の選手。(写真:アフロスポーツ)

 ラグビーに触れる機会の少ない多くの日本人にとって、「ラグビーの日本代表にはなぜ外国人選手がいるのだろうか」は最大の疑問かもしれない。しかし、ラグビーにおけるナショナルチーム入りの資格条項に、国籍はない。それがラグビーのルールであり、文化だ。

 2018年時点では「当該国居住3年以内、他国代表経験なし」という条件をクリアすれば、全てのプレーヤーに代表になる資格がある。そもそも2017年のサンウルブズ(国際リーグのスーパーラグビーへ日本から参戦)は、2019年のワールドカップ日本大会までに代表資格を得られそうな外国人選手を中心に採っていた。

 大型化の進むラグビー界にあっては、いくら小よく大を制すをモットーとする日本の代表チームでも、日本人にはない身長や骨格を有する外国人勢の存在は不可欠となりつつある。

「国際レベルの選手を育てる環境を作るのは、私の仕事ではありません。国際レベルで戦える選手は、42名しかいないということ。そうした選手を育てるのは自分の仕事ではない。トップリーグや大学がそうすべきで、国際レベルの選手を集めることが、私の仕事になります」

 前日本代表首脳のエディー・ジョーンズがこう言ったのは、2015年のワールドカップイングランド大会直前の公式会見の場であった。大会登録メンバー31名中10名を海外出身選手が占めたことについて聞かれた時だ。

 

 現日本代表ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフも、似たような問いにこう応じる。

「1995年以降にラグビーがプロ化してからは、日本代表には常に外国人がいました。なので、私は新たな試みをしようとしているわけではない。イングランド大会で南アフリカ代表に勝った日本代表は海外出身者が8名(実際は5名)。リザーブにも外国人が入っていました。自分もベストプレーヤーを選ぶだけです。勝たせるのが自分の役目なので」

 国際ラグビー界での決まりや多様性を担保する競技特性を踏まえれば、ナショナルチームやそれに準ずるサンウルブズのようなチームで選手のルーツ国を問うのは無粋と言えそうだ。

 もちろん、「世界における日本が勝つためのベストプレーヤーは誰か」という問いは、絶えずなされなければならないのは確かなのだが。

 3月下旬に刊行された『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』の一部である(初稿を一部編集。発売された書籍の原稿とは一部異なります)。

 ラグビーの日本代表およびサンウルブズには海外出身者も少なくない。その是非を問うのは本文の通り「無粋」と映りうるが、競技取材歴の長いテレビマンは「外国出身者が多いと一般の視聴者が違和感を覚える傾向は変わっていないと思います」。不特定多数の視聴者を相手にするニュース番組などへ映像を提供する人にとっては、これが現実なのだ。本記事タイトルにある『「ラグビー日本代表は日本人じゃなきゃ…」なんて言っている人、まだいるんですか?』の解も、筆者の意志とは別に「いる」と言わざるを得ないだろう。

 今後の課題は、多くのラグビー愛好家にとっての常識(選手選考の妥当性は絶えずチェックされるべきだが、外国人選手が多いこと自体はルール上問題ないということ)をどう世間の常識としてゆくかになりそうだ。

 なお原稿を引用した『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』は、日本唯一のプロクラブの多国籍軍という特質を持ったクラブの集団活劇。日本をはじめとした各国の戦士の姿も描かれている。

 チーム消滅を救った初代キャプテン、宴席を中座する仲間に大声であいさつするサブリーダー、ファンとのツーショットを自撮りする陽気なオーストラリア人などがシンパシーを呼ぶ。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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