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ニキビ跡の種類と治療法 - 皮膚科医が解説する最新情報

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(提供:イメージマート)

【ニキビ跡の種類と特徴】

ニキビ跡には、主に4つのタイプがあります。陥凹瘢痕(かんおうはんこん)、肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)、ケロイド、丘疹性瘢痕(きゅうしんせいはんこん)です。

陥凹瘢痕は、ニキビ跡の中で最も一般的なタイプで、皮膚の表面が凹んだ状態になります。陥凹瘢痕は、さらに3つのサブタイプに分類されます。

1. アイスピック瘢痕:深くて細い穴が開いたように見える瘢痕。

2. ボックスカー瘢痕:縁がはっきりとした、浅い四角い窪みの瘢痕。

3. ローリング瘢痕:波打つような起伏がある、なだらかな瘢痕。

肥厚性瘢痕とケロイドは、皮膚が盛り上がった状態の瘢痕です。肥厚性瘢痕は、元の傷の範囲内にとどまりますが、ケロイドは元の傷の範囲を超えて広がる特徴があります。両者とも、皮膚が過剰にコラーゲンを生成することが原因で起こります。

丘疹性瘢痕は、比較的新しく認識されたニキビ跡のタイプです。色素が薄い、または皮膚と同じ色の丘疹(きゅうしん)が現れるのが特徴で、ケロイド瘢痕と似た臨床的・組織学的特徴を示します。

【ニキビ跡の治療法】

ニキビ跡の治療法は、そのタイプによって異なります。

陥凹瘢痕に対しては、以下のような治療法が有効です。

1. ピーリング:グリコール酸などの薬剤を用いて皮膚の表面を剥がし、新しい皮膚の生成を促進する治療法。

2. マイクロニードリング(ダーマペン):極細の針を用いて皮膚に微細な穴を開け、コラーゲンの生成を促進する治療法。

3. レーザー治療:炭酸ガスレーザーやエルビウムヤグレーザーを用いて、瘢痕組織を削り、新しい皮膚の生成を促進する治療法。

肥厚性瘢痕やケロイドには、以下のような治療法が用いられます。

1. ステロイド注射:瘢痕部位にステロイド剤を直接注入し、コラーゲンの生成を抑制する治療法。

2. パルス色素レーザー:血管を選択的に破壊し、瘢痕の赤みや血流を減少させる治療法。

丘疹性瘢痕の治療法は限られていますが、ヤグレーザー(エルビウムヤグレーザーとは異なるレーザー)が効果的だと報告されています。

ニキビ跡の治療は、患者さんの皮膚のタイプや状態、ライフスタイルなどを考慮し、皮膚科医と相談しながら最適な方法を選ぶことが大切です。治療法によっては、複数回のセッションが必要であったり、ダウンタイムを要する場合があります。また、保険適用外の治療も多いため、費用面での負担も考慮する必要があります。

【ニキビ跡治療の留意点】

ニキビ跡の治療を始める前に、以下のような点に留意する必要があります。

1. 現在のニキビがコントロールされている状態であること。

アクティブなニキビがある状態で瘢痕の治療を行うと、新たなニキビ跡ができてしまう可能性があります。まずは、ニキビ自体をコントロールすることが重要です。

2. イソトレチノインを服用している場合は、治療開始までに一定期間の休薬が必要。

イソトレチノインは、ニキビの強力な治療薬ですが、皮膚の創傷治癒能力に影響を与える可能性があります。イソトレチノイン服用中や服用終了後6ヶ月以内は、レーザー治療や外科的治療を避ける必要があります。

3. 治療費用は自費となることが多い。

ニキビ跡の治療は、多くの場合、保険適用外の自由診療となります。事前に治療費用や必要なセッション数を確認し、経済的な負担を考慮する必要があります。

4. 色素沈着しやすい日本人の肌では、治療後の炎症後色素沈着(PIH)にも注意が必要。

日本人を含むアジア人の肌は、炎症後に色素沈着を起こしやすい傾向があります。レーザー治療やピーリングなどの侵襲的な治療後は、適切な日焼け対策とスキンケアが重要です。

5. 治療に伴うリスクとベネフィットを皮膚科医とよく相談すること。

ニキビ跡の治療には、一定のリスクが伴います。治療による副作用や合併症、期待される効果などについて、皮膚科医とよく相談し、理解した上で治療を受けることが大切です。

ニキビ跡は、思春期の多感な時期に発生することが多く、自尊心や対人関係に大きな影響を与えます。早期の治療が大切ですが、同時に過度なストレスを感じないよう、自分のペースで取り組むことが重要です。皮膚科医との信頼関係を築き、適切な治療を受けることで、ニキビ跡を改善し、自信を取り戻していきましょう。

参考文献:

J Am Acad Dermatol. 2024 Jun;90(6):1123-1134. doi: 10.1016/j.jaad.2022.04.021.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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