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ニキビの最新治療法を皮膚科医が徹底解説!原因・治療・予防のポイントとは?

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【ニキビの原因と発生メカニズム】

ニキビは思春期の男女に多く見られる皮膚疾患ですが、その原因は複雑で個人差が大きいことが知られています。主な原因として、毛穴の角化異常、皮脂の過剰分泌、アクネ菌の増殖、炎症反応などが挙げられます。

毛穴の角化異常は、毛穴の入り口で古い角質が剥がれずに詰まってしまう状態を指します。これにより、皮脂が溜まりやすくなり、ニキビができやすい環境が整ってしまいます。

皮脂の過剰分泌は、男性ホルモンの影響を受けて皮脂腺が刺激されることで起こります。思春期には男性ホルモンの分泌が活発になるため、皮脂の分泌量が増加します。

アクネ菌は、皮脂を栄養源として毛穴内で増殖します。アクネ菌が増えると、炎症を引き起こす物質を放出し、ニキビの炎症を悪化させます。

また、遺伝的要因や環境要因も大きく影響します。例えば、ニキビができやすい家系の人は発症リスクが高く、食生活では高血糖食品や乳製品の過剰摂取がニキビを悪化させる可能性が指摘されています。

ストレスによるホルモンバランスの乱れも皮脂分泌を促進し、ニキビの原因となり得ます。

皮膚のバリア機能が低下すると、外部からの刺激に弱くなり、ニキビができやすい環境が整ってしまうのです。

近年では、腸内細菌叢とニキビの関連性も注目されています。腸内細菌叢のバランスが崩れると、全身の炎症反応が高まり、ニキビの悪化につながる可能性があるのです。

また、皮膚の常在細菌叢の乱れもニキビの発症に関与していることが分かってきました。健康な皮膚では、様々な種類の細菌が共生していますが、アクネ菌が優勢になると炎症が起こりやすくなります。

このように、ニキビの原因は単一ではなく、様々な要因が複雑に絡み合っています。個人差が大きいため、自分の肌の特徴を知り、適切なケアを行うことが重要です。

【ニキビ治療の選択肢と最新の治療法】

ニキビの治療法は大きく分けて、外用薬、内服薬、物理療法の3つがあります。

外用薬では、レチノイド(ビタミンA誘導体)、過酸化ベンゾイル(殺菌効果のある薬剤)、抗菌薬(クリンダマイシンなど)などが使われます。レチノイドは角化を正常化させ、過酸化ベンゾイルはアクネ菌を減らし、抗菌薬は炎症を抑える効果があります。

内服薬では、抗菌薬(テトラサイクリン系、マクロライド系など)やホルモン療法(経口避妊薬、抗アンドロゲン薬など)が選択されます。重度のニキビには、ビタミンA誘導体の内服薬(イソトレチノイン)が使われることもあります。

最近では、マイクロニードル(極細の針)を用いた物理療法も注目されています。マイクロニードルを皮膚に刺すことで、薬剤の浸透を高めたり、コラーゲンの生成を促したりする効果が期待できます。

光線療法も、ニキビ治療に用いられる物理療法の一つです。青色光や赤色光を当てることで、アクネ菌を減らしたり、炎症を抑えたりする作用があります。

また、ケミカルピーリングは、古い角質を取り除き、毛穴の詰まりを改善する治療法です。

重症度に応じて適切な治療法を選択することが重要ですが、軽度から中等度のニキビには外用レチノイドと過酸化ベンゾイルの併用が、中等度から重度の炎症性ニキビには内服抗菌薬とレチノイド(日本では未承認)の組み合わせが推奨されています。

最新の治療として、カンナビジオール(CBD)、生物学的製剤(TNF-α阻害薬など)、皮膚細菌叢への介入、経口/外用プロバイオティクス(善玉菌)、ワクチン療法、バクテリオファージ療法(ウイルスを用いた治療)、抗菌ペプチド、ホスホジエステラーゼ阻害薬などが研究されており、今後の新たな選択肢として期待が寄せられています。

特に、皮膚細菌叢に着目した治療は、アクネ菌を減らすだけでなく、皮膚の恒常性を維持する上で重要な細菌を増やすことで、根本的なニキビ治療につながる可能性があり、注目されています。

【ニキビの予防法とセルフケアのコツ】

ニキビを予防するためには、日々の適切なスキンケアが欠かせません。

洗顔は1日2回を目安に、刺激の少ない洗顔料を泡立ててやさしく洗うようにしましょう。ゴシゴシと強く洗うと、皮膚のバリア機能が損なわれ、かえってニキビを悪化させてしまう恐れがあります。

洗顔後は、清潔なタオルで軽く水気を拭き取り、保湿を行います。肌のバリア機能を維持するために、自分の肌質に合った保湿剤を選ぶことが大切です。

ニキビができやすい部位は、皮脂が溜まりやすい Tゾーン(額・鼻・あご)です。この部位は、特に丁寧に洗顔し、保湿を行うようにしましょう。

外出時は、紫外線対策も忘れずに。紫外線は肌の炎症を引き起こし、ニキビを悪化させる原因となります。日焼け止めを使用し、できるだけ直射日光を避けるようにしましょう。

食生活では、バランスの良い食事を心がけましょう。

また、規則正しい生活習慣を心がけ、十分な睡眠をとることも大切です。睡眠不足はストレスにつながり、ニキビを悪化させる原因となります。

ストレス管理にも気を配り、自分なりのリラックス方法を見つけましょう。

ニキビは自分で無理に治そうとすると悪化してしまうこともあるので、症状が気になる場合は早めに皮膚科を受診し、専門医の指導を仰ぐことをおすすめします。

ニキビは思春期に多い皮膚疾患ですが、成人でも悩まされる人は少なくありません。

自分に合った治療法を見つけ、適切なセルフケアを続けることが大切です。

最新の研究成果を取り入れた治療法の開発も進んでおり、より効果的なニキビ対策が期待されています。

一人で悩まず、皮膚科専門医に相談しながら、ニキビを上手にコントロールしていきましょう。

参考文献:

- Kim, H.J.; Kim, Y.H. Exploring Acne Treatments: From Pathophysiological Mechanisms to Emerging Therapies. Int. J. Mol. Sci. 2024, 25, 5302.

https://doi.org/10.3390/ijms25105302

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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