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【コロナ禍と皮膚がん】メラノーマ患者の日光浴行動に変化 - 専門医が解説

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

【コロナ禍がメラノーマ患者の日光浴習慣に与えた影響】

メラノーマは、皮膚がんの一種で、皮膚の色素細胞(メラノサイト)ががん化したものです。日光の紫外線への過剰な曝露が主な原因とされています。そのため、メラノーマ患者には、日光浴を控えめにするなどの日光対策が推奨されています。

今回、米国のモフィットがんセンターとオレゴン健康科学大学の研究チームが、COVID-19パンデミック期間中のメラノーマ患者の日光浴習慣の変化を調査しました。調査の結果、パンデミック中は、患者の平日および週末の日光浴時間が有意に減少したことがわかりました。具体的には、平日の日光浴時間の中央値が、パンデミック前の1.9時間からパンデミック中は1.5時間に、週末は2.6時間から2.2時間に減少しました。

また、パンデミック前1年間と比較して、パンデミック中の1年間では、日焼けを経験した回数も有意に減少しました。

この結果から、COVID-19パンデミックによる社会的距離戦略や外出自粛要請などが、メラノーマ患者の日光浴習慣に影響を与えた可能性が示唆されます。

【メラノーマ患者に対する日光対策指導の重要性】

メラノーマは、早期発見・早期治療が非常に重要ながんです。メラノーマ患者は、初回のがんが完治した後も、二次がんを発症するリスクが高いことが知られています。そのため、日光対策を継続することが大切です。

今回の研究で、パンデミック中はメラノーマ患者の日光浴時間が減少したことがわかりました。これは、感染予防のために外出を控えたことが影響していると考えられます。一方で、屋内でも窓越しの日光から紫外線を浴びることがあるため、油断は禁物です。

また、定期的な皮膚のチェックと、皮膚科専門医による診察を受けることも大切です。

【日本におけるメラノーマ患者の日光対策の現状】

日本では、欧米と比べるとメラノーマ患者数は少ないものの、近年増加傾向にあります。日本人は、肌が白く紫外線に対する感受性が高いため、日光対策は特に重要です。

日本皮膚科学会は、一般の人々に向けて、日光対策の重要性を啓発する活動を行っています。しかし、メラノーマ患者に特化した日光対策指導の実態については、まだ十分に明らかになっていません。

今後は、日本におけるメラノーマ患者の日光対策の現状を調査し、適切な指導方法を確立していく必要があるでしょう。また、COVID-19パンデミックが、日本のメラノーマ患者の日光浴習慣にどのような影響を与えたのかについても、検討が必要だと考えます。

以上、コロナ禍におけるメラノーマ患者の日光浴習慣の変化について、海外の研究を中心にお話ししました。皮膚がんは、早期発見・早期治療が何より大切です。もし、自分の皮膚に変化を感じたら、迷わず皮膚科専門医に相談することをおすすめします。

参考文献:

Trepanowski N, et al. Arch Dermatol Res. 2024;316:221.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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