「ゲーム障害」を新たな病気に追加へ ゲーム障害ってどんなもの?何が変わるの?
いまゲーム障害(Gaming disorder)という言葉に、世界的な注目が集まっています。きっかけは、国連の専門機関であるWHO(世界保健機関)が、国際疾病分類(ICD)に新しく「ゲーム障害」を加える方針を明らかにしたことです。
ネットゲーム依存、疾病指定へ WHO定義、各国で対策 朝日新聞デジタル 2018年1月3日18時10分
このニュースについて、ちょっと聞きなれない単語が多く「わかりにくい」と感じられた方もいるかもしれません。そもそもゲーム障害ってどんなもの?今回のことで、何が変わるの?調べてみました。
そもそも「ゲーム障害」ってどんなもの?
WHOの草案(※1)によると、「ゲーム障害」は次のように定義されています。
ゲーム障害は、ゲーム(デジタルゲームまたはビデオゲーム)を、長時間したり、たびたびしたりする行動パターンが特徴です。
具体的には、次のようなものです。
1)ゲームの回数やかける時間などを自己管理できない
2)ゲームをすることが、他の日常生活の活動よりも優先される
3)生活などに悪い影響が出ているのにやめられず、さらに熱中したりする
こうした行動パターンが、日常の生活を送るうえで重大な障害(家族との関係や、仕事、教育なども含む)となる状態が、12か月にわたって続くとゲーム障害と診断されます。症状が深刻な場合には、期間が短縮される場合もあります。
ICD11 Beta Draft 6D11 Gaming disorderより筆者和訳)
ざっくりまとめれば、「ゲームをしたい!」という気持ちが抑えられず、どうしても続けてしまうことで、長期間に渡って家族関係や仕事などに問題が起きている状態と言えそうです。
「国際疾病分類」に追加されると何が変わるの?
WHOは今回、「ゲーム障害」を国際疾病分類(ICD)に追加する方針を明らかにしました。
でも「国際疾病分類」って聞きなれない言葉ですよね。厚生労働省のHPによると、次のように説明されています。
(ICDとは)異なる国や地域から、異なる時点で集計された死亡や疾病のデータの体系的な記録、分析、解釈及び比較を行うため、世界保健機関憲章に基づき、世界保健機関(WHO)が作成した分類である。
世界にはたくさんの国があります。それぞれの国で、病気の分類が違っていたらどうなるでしょう。
たとえばA国では「かぜ」と呼ばれている病気が、B国では「のど痛み症候群」と呼ばれており、さらに微妙に診断基準が違っていたとします。こうなると、A国とB国のデータを比較することができません。国際的に協力して病気の対策をしようとしたり、治療法を開発しようとしたりするときに、困った事態になりそうです。
そこでWHOは、世界のいろいろな国が共通して使える病気の分類基準(ICD)を作り、さらに状況の変化に対応できるよう、定期的に改訂を続けています。
日本でも国際的なルールに合わせ、様々な公的な調査にICDを用いています。たとえば、いま全国で色々な病気で治療を受けている人が何人くらいいるのか?を調べる調査(患者調査)もICDに準拠しています。
つまり、ICDにゲーム障害が加えられると、日本にいまゲーム障害で治療を受けている人がどのくらいいるのか?などのデータが出てくることになります。実態が明らかになることで、対策や治療に注目が集まるようになると予測されます。
今後のスケジュールは?何が気をつければ良いの?
ICDの改訂作業は、いま大詰めを迎えていますが、まだ終了したわけではありません。WHOのQ&Aによれば「2018年の半ば」には新しい版(ICD-11)が発行されるとのことです。今回の草案に対してはゲームの業界団体から反対声明が出されるなど反発も起きており、今後、変更される可能性もあります。
ただ、ゲームに熱中するあまり生活に支障を抱える人が増え、国際的な注目を集めているのは確かです。自分や周りの人が、ゲームをやりすぎていないかどうか、今回をきっかけに考えてみても良いかもしれません。WHOはQ&Aのなかで次のような指摘をしています。
Q ゲームをする人は、みんなゲーム障害を心配しなければならないんですか?
これまでの研究によれば、ゲーム障害は、デジタルゲームやビデオゲームをする人のうちほんの一部にしか影響しないと考えられます。
しかし、ゲームをする人は、それに費やす時間が長すぎないか、特に日常生活の支障になっていないか気を付けたほうが良いでしょう。ゲームによって肉体的・精神的な健康が損なわれていないか、他人とのつながりに問題が起きていないかなどを注意する必要があります。
WHO Online Q&A ”Gaming disorder”より筆者和訳
参考文献