イチローさんが、女子野球 未来の全日本戦士たちと交流
またも、女子野球界に歴史的な日が訪れました。全国の高校硬式野球部を訪ね、指導するなど高校球児と交流しているイチローさんが、女子高校球児とも交流したのです。全日本女子野球連盟・全国高等学校女子硬式野球連盟は、選手育成を目的とした強化プログラムとして、18日、ほっともっとフィールド神戸(神戸市)で、23名からなる女子高校選抜チームとイチローさん率いる草野球チーム、KOBE CHIBENとのエキシビションマッチを行いました。
高校選抜 000 000 000 0
K・CHIBEN 000 100 00x 1
【バッテリー】
高校選抜 柏崎、坂本、吉安、森光、松本- 神野
富田、山口、川上 - 成田
KOBE CHIBEN イチロー – 藤本
イチローさんとの真剣勝負に挑む
イチローさんは、9番ピッチャーとして出場。小気味いい投球リズムで、初回から三者三振と本領を発揮。8回には、疲れから足がつるトラブルに見舞われながらも最後まで130キロ台をキープし9イニング147球を投げ抜き、17奪三振、被安打4、与四死球3で完封しました。高校選抜は、イチローさんから放った4安打のうち3本は内野安打ながらも、1本はセンター前まで運ぶ快音を響かせました。投げてはイニング毎に代わった
試合後は、寒さによるケガの発生を考慮し、予定されていた野球教室は急きょ変更、選手からの質問に答える形でのイチローさんによる野球講座となりました。イチローさんは、身ぶり手ぶりを交えて約20分間熱弁をふるいました。
選抜チームメンバー(連盟発表順)
畑中ゆりあ(花咲徳栄)
柏﨑咲和(福井工大附属福井)
富田彩加 (京都外大)
坂本ひなた(埼玉栄)
安食沙南(島根中央)
田中来宙(日南学園)
前田葵(岐阜第一)
吉見心夏(神村学園)
神野百花(福知山成美)
成田紫瑛(横浜隼人)
吉安 清(至学館)
山口優生菜(クラーク国際)
川上未夢(作新学院)
一谷優奈(札幌新陽)
森光 唯(秀岳館)
岡田樹花(新田)
花本穂乃佳(履正社)
石山明佳音(折尾愛真)
日野口加奈(蒼開)
宮木彩(京都両洋)
齋藤栞(開志学園)
松本里乃(高知中央)
藤本莉央(岡山学芸館)
フルスイングで挑む高校選抜
印象的だったのは、イチローさんの真剣勝負。相手が女子だろうが手を抜きません。特に、ランナーを出すとギアを上げる投球術は、選手たちにも勉強になったはずです。投げるごとに、息遣いが伝わってきました。真剣勝負を挑み続けた8回途中、とうとう足がつってしまいます。が、躊躇することなく9回まで続投。最終回にマウンドへ上がる姿を見せた時は、自然とスタンドから拍手が沸き起こりました。最後まで手を抜かない姿は格好良かったです。もちろん、打席に立つ姿は言わずもがな。このように自身のプレーする姿で女子選手たちへ、野球を伝えようとしていたように感じました。
また、選抜選手たちのフルスイングも印象的でした。今日のイチローさんのストレートの最速は135キロ。彼女たちはタイミングをとりながら、何とかバットに当てようと懸命に振っていました。そのほとんどが空を切りましたが、気後れせず思い切り振る姿は潔く、見ている者に勇気を与えました。
選抜選手たちは、未来の全日本戦士たち
エキシビションマッチが実現した背景は、全日本女子野球連盟と全国高等学校女子野球連盟が、次世代の女子日本代表を育成しようと、イチローさんとの交流を熱望。女子高校野球への関心のあったイチローさん側も以前から『何かやりましょう』と言ってくれていたことから実現となったそうです。連盟の山田会長は、「試合を通じてしか学べないこともある。こうして試合をして下さったのは、本当に有意義なこと」と話していました。
今回集まった23名は全員、高校3年生。卒業後は、ジャイアンツ女子チーム一期生の吉安清さん(至学館)や大学、その他のクラブチームで野球を続けることが決まった、将来、日本代表入りを目指す高い志のあること条件に、各校の監督推薦で集まってきました。今日の経験を、今後の野球人生に活かして欲しいという願いが込められています。
イチローさんのコメント
「(8回のトラブルは)はじめて。寒さと普段の試合と力の入り方が違うのもあると思う。何とか最後までできたし、自分の限界が見られたので、アスリートとしてもとても有意義な一日でした。女子の野球熱は男の子に全然負けてない。本当にWBC以来の緊張感を味わった。この年代の子たちの野球は面白い。先を目指していてまっすぐで、気持ちいいですよね」
高校選抜チーム 中島梨沙監督のコメント
「夢のような時間でした。試合前に『120キロでも打てないと思いますがよろしくお願いします』と伝えていたものの、全力で真剣勝負をして下さったことに感動しました。選手たちには、質もキレも今までにないボールが来る、その中でいかに自分のスイングができるかに挑戦して欲しいとだけ伝えていました。また、選手たちの質問に答えて下さったイチローさんの話は、男女関係なく一野球選手、一高校球児への言葉でした、嬉しかったです。
あの子たちしか味わえなかった体験なので、自チームへの仲間、監督、後輩に伝える責任と義務があるよと言いました。感じた通りを伝えて欲しい」
次回は、選手たちが、交流戦を通じて、どのように感じたのか、試合後のコメントを掲載します。
(写真は全て筆者)