ノルウェーで内閣改造 移民・温暖化懐疑派などポピュリスト色が色濃く
19日、アーナ・ソールバルグ首相(保守党)が、内閣改造を発表した。新閣僚は男性の3名。
ノルウェーでは2013年に左派から右派への政権交代を経て、2017年に国政選挙を控える。現政府は保守党と進歩党の連立内閣。選挙直前となり、首相は一部の閣僚を一新。
移民や難民申請者の受け入れに懐疑的な、右翼ポピュリスト政党の進歩党は、新たな強者を追加。「さらに右寄りで保守的な」閣僚の集まりとなったという批判の声もある。
(冒頭写真左より)
EEA/EU担当大臣に、フランク・バッケ・イェンセン氏(保守党)51歳
法務・危機管理大臣に、ペール・ヴィリー・アムンセン氏(進歩党)45歳
石油・エネルギー大臣に、テッリェ・スーヴィクネス氏(進歩党)47歳
大きな注目を集めたのは、進歩党の2大臣。
16歳の少女と性行為をしたスキャンダル政治家、地元では大人気市長
スーヴィクネス氏は、自治体オースの大人気市長。1999年より市長を務めているが、進歩党の党員でこれほど長く市長を続けられた人物はかつていない。
一方、2001年に進歩党青年部の党員である16歳の少女と、青年部の全国集会後のパーティーで、ホテルで性行為をした人物としても知られている。同氏は当時、別の女性と結婚しており、少女は強姦だったと主張した。スーヴィクネス氏はその後謝罪し、責任をとり国政の場から離れ、小さな町の人気市長として政治に関わっていた。
前石油大臣は、石油採掘を優先し、自然保護を軽率に扱ったとして、その手腕が厳しく非難されていた。内閣改造がいずれ行われる場合、人事異動の対象となるのではとされていたが、かつてのスキャンダル政治家のカムバックに地元メディアは驚いて報道している。
スーヴィクネス氏は少女との騒動がなければ、進歩党の期待の星として、活躍と出世が大きく期待されていた人物。地元での市長としてのカリスマ性が、国会で発揮されるか注目を浴びる。
過去に仰天発言を連発、移民大臣のように厳格
アムンセン法務・危機管理大臣は、過去のSNSでの発言、メディア取材での発言が掘り起こされ、改めて人々を驚かせている。地球温暖化対策、難民申請者の受け入れ、イスラム教徒、同性愛者、シェンゲン協定、先住民族サーミ人などに否定的な発言を連発。
物議を醸すリストハウグ移民・社会統合大臣と同等のレベルの思想を持っているとさえ言われる。この2人が、移民や難民の受け入れ規制の指揮をとる、最も重要な省の椅子に座り、タッグを組むこととなる。
首相「批判は大臣たちの仕事ぶりを見てから」
この日、首相は王宮前で新閣僚3名を連れて報道陣に紹介。その後、首相官邸で記者会見が開催された。
進歩党大臣2名の過去の発言や言動について、厳しい質問を投げかける報道陣に対して、「批判をするのは早すぎる」と回答。大臣としての仕事をみてから判断するべきだと説得した。
また、気候変動懐疑派の進歩党について、「気候変動は人間が原因という政府の方針に変わりはない。全閣僚はそれに従うということを、全員に今日再確認した」と話した。
また、政権の政治色がさらに右寄りになるという批判に対し、「政府の政治基盤に変更はない」とした。
Photo&Text: Asaki Abumi