BE・LOVEがトップの6.6万部…女性向けコミック誌の部数動向をさぐる(2019年7~9月)
女性向けコミック誌のトップは「BE・LOVE」
日々進歩を見せる技術革新、中でもインターネットとスマートフォンをはじめとしたコミュニケーションツールの普及に伴い、紙媒体は立ち位置の変化を余儀無くされている。すき間時間を埋めるために使われていた雑誌は大きな影響を受けた媒体の一つで、市場・業界は大変動のさなかにある。その変化は少年・男性向けコミック誌ばかりでなく、少女・女性向けのものにもおよんでいる。今回はその雑誌のうち、女性向けコミック誌(少女向けのコンセプトで発刊されている雑誌群よりも対象年齢は上。おおよそ大学生以上が対象)について、日本雑誌協会が四半期ベースで発表している印刷証明付き部数(※)から、実情をさぐる。
まずは女性向けコミック誌の現状。最新データは2019年7~9月のもの。
「BE・LOVE」(主に30代から40代向けレディースコミック誌)がトップ、「プチコミック」「Kiss」が続く。「FEEL YOUNG」を除けば各誌でそれぞれ類似順位他誌と一定の差異があり、並べると比較的整った傾斜ができている。ただし部数そのものは数万部の単位のため、ヒット作が生まれることで雑誌が大盛況となれば、順位が大きく変動する可能性はある。例えばトップの「BE・LOVE」とそれに続く「プチコミック」では、部数の差異は5533部でしかない。
プラスは皆無…四半期変移から見た直近動向
次に前期と直近期との部数比較を行う。雑誌は季節で販売動向に影響を受けやすいため、精密さにはやや欠けるが、大まかに雑誌推移を知ることはできる。
全誌がマイナス、誤差領域(上下幅5.0%以内)を超えた下げ幅は4誌。1割以上の下げ幅は「フラワーズ」。
「フラワーズ」は部数底上げの立役者的存在「ポーの一族」について、2019年7月号から新章「ポーの一族 秘密の花園」の連載がスタートしたものの、続きは2020年春からとなり、現在は休載中。吉田秋生先生の新連載「詩歌川百景」や、田村由美先生の「まんが教室」のレポートなど、読みごたえがある作品が多数掲載されたが、部数の維持には至らなかったようだ。
今期部数は2万9000部。「ポーの一族」掲載などで跳ね上がる期以外はおおよそ3万3000部を維持していたのだが、2018年後半あたりからその原則が崩れ、今期では初めて3万部を割り込んでしまった。少なくとも2020年春までは「ポーの一族」掲載による部数の支えが期待できないことから、しばらくはこの状況が続くのだろう。
季節変動を考慮しなくて済む前年同月比では
続いて「前年同期比」による動向。年ベースの変移となることから大雑把な状況把握となるが、季節による変移を考慮しなくて済むので、より確かな精査が可能となる。
全誌がマイナスで、しかも誤差領域を超えた下げ。一番の下げ幅を示したのは「Cookie」で、マイナス25.4%。
緩やかながらも確実に部数を減らしている状態。起死回生の手立て、例えば状況を打開するヒット作の登場が強く求められる状況と判断せざるを得ない。
「進撃の巨人」や「おそ松さん」のような盛り上がりを複数タイトルで意図的に起こせれば、それこそ全盛期の週刊少年ジャンプのような活性化も不可能では無い。最近ならば「ポーの一族」の新連載が好例(影響力は限定的だったが)。そのためには幅広い層へ訴えかける、購入動機をかきたてる作品との連動、あるいは発掘、さらには創生が欠かせまい。
他方、他ジャンルの記事でも言及しているが、多くの雑誌で電子化が行われており、電子版に読者の一部を奪われ、結果として紙媒体としての印刷部数が減っている可能性は否定できない。特に今期では多くの雑誌が大きな部数の減少を示しており、電子版に読者がシフトしたという推測以外の原因が見つからない。あるいは単に、需要に合わせた部数の削減なのか。
しかしながら他の雑誌同様、電子版の部数は非公開のため、その推測の検証ができないのは残念ではある。
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※印刷証明付き部数
該当四半期に発刊された雑誌の、1号あたりの平均印刷部数。「この部数だけ確かに刷りました」といった印刷証明付きのものであり、雑誌社側の公称部数や公表販売部数では無い。売れ残り、返本されたものも含む。
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