ノート(58) 自白獲得や供述確認、固めなどを狙った取調べ官の一時的な交代劇
~達観編(8)
勾留22日目(続)
ワンポイント登板
強制捜査着手時や再逮捕時を選択するなど、取調べ官の交代時期には神経を使うが、時として勾留途中の段階で交代を行うこともある。例えば、それなりに取調べ能力のある検事が取調べを行っており、あと一息で被疑者が自白に至りそうだが、その押しがやや甘いといった場合だ。
早急に自白を得て一気に捜査を前に進めるため、豪速球投手の検事と一時的に交代するわけだ。もとの検事の能力があまりにも低すぎるとか、被疑者との相性が悪いというわけではないので、別の検事が自白調書へのサインを得れば、再びもとの検事に担当が戻ることとなる。
仕事の早さが重要
東京地検特捜部が手がけたある詐欺事件でも、あと一歩で副将級の共犯者を自白させられない検事がいた。客観証拠が多数押収され、主犯を含めた共犯者らも早い段階で詳細な自白をし、既に供述調書も積み上がっている状況だった。
他人の不動産をめぐる「地面師」と呼ばれる古典的な手口の詐欺事件だったが、政治家名が登場することなどから、3班態勢の特捜部のうち、政財官界をターゲットとする1班が捜査を行っていた。
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