ノルウェー入り江に迷い込んだ病気のクジラ、胃の中はまるでゴミ箱。大量のプラスチックを発見
クジラの胃の中から見つかった大量のプラスチックごみに、ノルウェーの人々が衝撃を受けている。28日、ノルウェー南西部ソトラの入り江に1頭のアカボウクジラが迷い込んだ。地元の消防機関はクジラを救おうとしたが、不調に見えたクジラを病気と判断し、止むを得ず殺処分をすることに。
ノルウェーでは珍しい種類のクジラだったため、地元のベルゲン大学の海洋生物学者たちは、博物館での展示物として保存するために、クジラを解剖。
結果、2020キログラムのクジラの胃の中から、30以上のプラスチックの袋、大量のマイクロプラスチック(5ミリメートル以下のプラスチック)が見つかった。
人間が海洋に投棄したプラスチック廃棄物が、生物に与えるダメージを目の当たりにし、ノルウェーでは悲しい事実として大きく報道されている。
ノルウェー国営放送局NRKに対して、ベルゲン大学の海洋生物学者リスレヴァンド氏は、「胃の中はプラスチックで満杯になっていました。とても悲しいことです」とコメント。
5人のスタッフが6時間かけて調査した結果、プラスチックの中にはパンの袋やチョコレートの紙などがあり、世界中からのゴミが集まっていたという。クジラはプラスチックを食糧として勘違いして食べたとリスレヴァンド氏は考えており、結果、栄養不足に。海岸に迷い込むまでの数日間は、苦しんでいただろうとされている。
現場に居合わせたベルゲン大学の生物研究者Christoph Noever氏は、クジラの胃の中で発見された廃棄物の写真を提供してくれた。
「このクジラの胃の中にあったプラスチックの袋の量は異常です。正直、クジラのお腹の中を見ているというよりも、ゴミ箱を開けているような気分になりました。私たち人間が、海をどれだけ汚染しているかという悲しい例です」と、メールで回答。
同氏によると、ノルウェーでは、通常はクジラの胃の中までをチェックするということは普通ではない。たまたま今回が希少なアカボウクジラで、博物館で骨格を展示しようということにならなければ、プラスチックごみは見つかることはなかっただろうとしている。
国連環境計画によると、海洋に投棄されているプラスチックごみは、毎年800万トンあまり。The World Economic Forumの2016年1月の発表レポートによると、2050年には海で泳いでいるものは、魚よりもプラスチックのほうが多くなるだろうとされている。
ノルウェーの環境団体や環境大臣は、今回の出来事を受け入れがたいとして批判。ヘルゲセン環境大臣は、中国やインドネシアなどのアジアを中心とした、各国との取り組みが重要と強調。
一方、環境政策に最も先進的な「緑の環境党」や環境団体からは、「ノルウェーもプラスチックごみを大量に出していながら、政府は“ほかのだれかが問題をいずれ解決してくれるだろう”と、問題から目を背けている」と批判。
いずれにせよ、1人や1か国だけでは解決できないため、全世界でこの問題をもっと意識するべきだと議論されている。
Text: Asaki Abumi