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アメリカ8日間連続竜巻発生。なぜこの時期に?

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
23日竜巻によって破壊されたミシシッピ州の教会(提供:National Weather Service Memphis/ロイター/アフロ)

アメリカでは、12月21日(月)から8日間連続で竜巻が発生しています。今週に入ってからも、南部を中心に新たに約10個の竜巻が発生し、家屋が倒壊するなど、再び被害が広がっています。

National Climate Data Centerをもとに作成
National Climate Data Centerをもとに作成
National Climate Data Centerを参考に作成
National Climate Data Centerを参考に作成

実は先々週までは、今年は史上最も竜巻による死者が少ない年になるだろうと、言われていました。12月以前の犠牲者は10人と、年間平均の60人を大きく下回る数だったからです。

しかし、突然の竜巻の連続発生により、23日(水)には南東部で18人、26日(土)にはテキサスで11人の死者が出て、今月は史上2番目に死者数が多い12月となってしまったのです。

12月の竜巻

12月の竜巻の平均発生数。NOAA
12月の竜巻の平均発生数。NOAA

アメリカの竜巻のピークは、4月から6月にかけての春の時期です。それは冬の名残りの寒気と、春の暖気とがぶつかり合うことで、雲が発達しやすくなるためです。一方、広く寒気に覆われる冬場は、竜巻のオフシーズン。ただ、比較的温暖な南部では、毎年12月に平均で約25個の竜巻が発生しています。その意味でいうと、12月に南部で起こる竜巻は、必ずしも珍しいというわけではありません

しかし、問題はその強さでした。26日(土)には、テキサス州ダラス郡でEF4(※)、隣のコリン郡ではEF3(※)の竜巻が発生し、街に壊滅的被害を与えました。

このように、今年の12月は強い竜巻が発生したことや、都市部にも影響したことで被害が拡大し、死者数は2000年以降では最も多く、1953年の49人に次ぎ、史上2番目となっています。

National Climate Data Centerの情報を参考に作成
National Climate Data Centerの情報を参考に作成

今月竜巻が多いのはなぜか

では、一体なぜ、今年の12月は竜巻の被害が多いのでしょうか。

それは、春のような天気になっていたからです。

アメリカで寒暖差が激しいのがわかる。NOAA
アメリカで寒暖差が激しいのがわかる。NOAA

寒気と暖気の境目であるジェット気流がアメリカ上で大きく蛇行し、北からの強い寒気と、南からの暖かな空気がアメリカ南部でぶつかっていたのです。竜巻が発生した地域の東側では、春のようにポカポカで、観測史上最も高い日最高気温を記録していた一方で、西側のニューメキシコ州などでは、最多降雪量の記録を塗り替えました。

NOAA
NOAA

加えて、今年はメキシコ湾の海水温が例年よりも高いために、より湿った暖かな空気が南から流入していました。ちなみに、今回最も被害を受けたテキサス州ダラス郡(死者8人)では、1957年にも竜巻が発生し、10人の方が命を落としています。実はこの年も今年同様大規模なエルニーニョが起きていました。

今後の天気

一週間以上続いた悪天ですが、29日(火)から回復に向かう見込みです。被害に遭われた方々のご冥福をお祈りいたします。

※EF: 改良藤田スケール(Enhanced Fujita Scale)で、日本人気象学者・藤田哲也博士がアメリカで作成した世界初の竜巻スケールを、後に改良したもの。EF4は、上から2番目に強いスケールで推定風速は秒速75~89m、EF3は、上から3番目に強く61~74m。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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