日本経済新聞が「2018年は食品ロス元年」 10月は「世界食料デー」月間
2018年10月1日付、日本経済新聞の記事「余った食材 ネットで融通 新興勢、食品ロス削減に商機 店の材料や料理、消費者に 」に「今年(2018年)は食品ロス元年」と書いている。日頃、食品ロスを減らすための啓発活動をしていると、「食品ロスを減らそうとすると経済が縮むからやめて欲しい」などと言われることもあるので、全国紙の経済紙がこのように特集を組んで発信してくれるのは、非常にありがたい。
オンラインの記事は登録会員のみが読めるようになっており、食品ロスをビジネスとして活用する事例が3つ紹介されている(本紙では全部読める)。
「余ったから使う」の前に「余らせない」
次回の記事で日経新聞にお願いしたいのは、世界的に環境配慮の原則である「3R(スリーアール あるいは さんアール)」では「Reduce(リデュース:廃棄物の発生抑制)」が最優先である、ということを記事で強調して欲しいということだ。
今回の記事の事例は、余ったものを再利用(Reuse:リユース)する内容なので、3Rでは2番目に来る。3番目が「Recycle(リサイクル:再生利用)」だ。Reduce(リデュース)が最もエネルギーやコストを無駄遣いしないので、日本の食品リサイクル法でも最優先とされている。
経済界の人たちは、おそらく冒頭で触れたように「食品ロスを減らそうとすると経済がシュリンクする(縮む)」という考え方が多いだろう。作り過ぎない、売り過ぎない、買い過ぎないというのがReduce(リデュース)の基本精神だが、売上至上主義であれば、「いやいや作らなきゃ欠品するし、欠品したら売り逃すでしょう」「たくさん作って余れば捨てる方が経済合理性がある」というのが本音だと思う。
でも2015年9月に国連のサミットで採択された「SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)」は、環境配慮と経済を両立させる考え方だ。「余ったらこうしよう」の前に「余らせない」ことが最優先だ。余ったものを再利用する活動は、人々への啓発性が高く、素晴らしいが、それでも使いきれないぐらい、日本には食べられるものが余っているからだ。何しろ、東京都民が一年間食べている量に匹敵する、まだ食べられる食料を毎年捨てているのだから。
経済産業省は食品ロス削減のプロジェクトに尽力している
「マテリアルフローコスト会計(MFCA)」は、経済と同時に環境配慮も両立させる考え方で、経済産業省がその事例を発表している。
経済産業省は「食品ロス」に関与する5省庁(農林水産省・環境省・消費者庁・文部科学省・経済産業省)のうちの1つだ。経済産業省が主となって関与する食品ロス削減のプロジェクトは複数ある。
出口治明さん「メディアの不勉強」
筆者は幻冬舎新書から著書を出版したこともあり、同じ編集者に担当して頂いて著書を出版された、立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんの出口塾に参加している。
月一回、毎回4つのテーマに基づき出口さんが考え方を説明し、それに対して参加者が質問する、というものである。これまで3回ほど質問させて頂いたが、出口さんがよくおっしゃるのは「メディアの不勉強」という言葉だ。大多数に影響を与えるマスメディアが勉強していないから、視聴者(あるいは読み手)として受け取った大多数が誤解する、と。
自分の不勉強を差し置いて恐縮だが、筆者のテーマである「食品ロス」に関するメディアの発信については、毎回そう思うことが多い。3Rの「Reduce(リデュース)」を強調している記事や番組に出会うことはほとんどない。たいがい「余ったからこうしよう」か「リサイクル」だ。Reuse(リユース)もRecycle(リサイクル)も大事だが、Reduce(リデュース)についても触れて欲しい。が、その記述が無い。
「発信すれば社会は変わる」
出口さんが、やはり毎回おっしゃるのは「声を上げなければ社会は変わらない」(「声を上げれば社会は変わる」)だ。
毎年10月は、「世界食料デー」月間。世界中で食料問題について語る機会やイベントが一年のうちでも多い月だ。
食べ物は命。命を無駄にしない社会にするために、微力ながら、これからも声を上げていきたい。