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藤井聡太棋聖(18)初防衛に向け快勝スタート! 最強挑戦者・渡辺明名人(37)の先手番をブレイク

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月6日9時。千葉県木更津市・龍宮城スパホテル三日月において第92期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局▲渡辺明名人(37歳)-△藤井聡太棋聖(18歳)がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 9時に始まった対局は18時24分に終局。結果は90手で藤井棋聖の勝ちとなりました。

 藤井棋聖は初防衛に向けて、幸先よく1勝をあげました。

 第2局は6月18日、兵庫県洲本市・ホテルニューアワジでおこなわれます。

 藤井棋聖の今期成績は6勝2敗(0.750)。通算成績は219勝42敗(勝率0.839)となりました。

 藤井棋聖と渡辺挑戦者の対戦成績は、藤井6勝、渡辺1勝となりました。

藤井棋聖、堂々たる完勝

 振り駒の結果、第1局の先手は渡辺棋聖。戦型は相掛かりとなりました。しばらくは今年2月の朝日杯準決勝▲渡辺-△藤井戦の進行をたどり、激しい順に進んでいきます。

 午後の戦い。57手目、渡辺挑戦者は飛車取りに香を打ちました。対して藤井棋聖は飛車を逃げずにじっと角筋を開きます。駒があちこちで当たって、なんとも難しい局面です。

 59手目。渡辺名人は取れる飛車を取らず、じっと自陣に歩を打って、銀取りと香取りを同時に受けます。さらに攻めてくる藤井棋聖。1時間23分の長考の末、渡辺挑戦者は飛車を取りました。なんとも力のこもった応酬。しかしこの進行で、わずかにリードを奪ったのは藤井棋聖の方でした。

 手番を得た渡辺挑戦者は、藤井玉へと迫っていきます。そこを藤井棋聖は正確に応対。着実に優位に立ちました。

 渡辺挑戦者の苦境を示すかのように、残り時間はどんどん削られていきます。両者の対戦では、長考派の藤井棋聖の消費時間が先行してなくなっていくことがほとんどです。しかし本局、先に残り10分を切ったのは渡辺挑戦者でした。

 88手目。藤井棋聖は中段に桂を2枚並べ、渡辺玉に迫ります。「すーん」とした藤井棋聖の落ち着いた表情。対して渡辺挑戦者は一瞬、苦しそうに顔をゆがめました。

 90手目、藤井棋聖は中段に3枚目の桂を打ちます。使いづらいはずの桂を見事に使うのが藤井棋聖の勝ちパターンのひとつです。棋聖戦の主催紙は産経新聞。なるほど、三桂が見事に渡辺陣に刺さる図面となりました。

記録「30秒。残り5分です。・・・40秒」

渡辺「負けました」

 攻防ともに見込みなしと見た渡辺挑戦者。三桂の図を残して、潔く投了しました。

 両者は羽織を着て、マスクをつけ、対局室に報道陣が訪れるのを待ちます。

渡辺「(65手目▲4五桂と)桂跳ねたところ、香車から打たないといけなかったですかね。本譜(△3三桂と)ぶつけられて、いきなりダメになっちゃった。取り合っちゃいけなかったのかなあ・・・」

 渡辺挑戦者が苦笑しながら口を開きました。

 大戦略家・渡辺名人の先手番を破った藤井棋聖。初防衛に向けて、堂々たるスタートを切りました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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