S-300V地対空ミサイルが北方領土に配備
ロシア国防省は12月1日、北方領土(千島列島のおそらく択捉島)に長射程地対空ミサイル「S-300V4」を配備したと発表しました(露語:С-300В4)。
実はこの地対空ミサイルは陸軍の管轄で、名前が似ている空軍のS-300とは設計が全く異なる別物です。単にS-300だけだと空軍の物の方を指すので、陸軍の物を指す場合は少なくともS-300Vとまで書かなければならないという、ややこしい命名となっています。
代表的な長射程地対空ミサイル(長SAM)
S-300V系(ロシア陸軍)
- 9M82・・・全長9.9m 重量4685kg 2段式
- 9M83・・・全長7.9m 重量2290kg 2段式
※発射車両は戦車と同様の履帯式
※9M82は2連装、9M83は4連装
S-300P系(ロシア空軍)
- 5V55・・・全長7.2m 重量1500kg 1段式
- 48N6・・・全長7.5m 重量1900kg 1段式
- 40N6・・・最新型で詳細不明、S-400用
2段式※1段式と判明
※現行型S-400の当初の名称はS-300PMU3
※S-300後期型以降は中射程の9M96も使用可能
参考:アメリカ陸軍の長SAM
- PAC-2・・・全長5.3m 重量912kg 1段式
- THAAD・・・全長6.2m 重量900kg 1段式(弾頭分離)
※PAC-2は生産終了、中射程のPAC-3に移行
※THAADは発射重量662kgという資料も存在
S-300Vはロシア陸軍の野戦防空システムの最上層部を構成し、航空機や巡航ミサイルを迎撃する長射程の地対空ミサイルであり、さらに準中距離弾道ミサイルの迎撃が可能な弾道ミサイル防衛システムでもあります。なお9M82および9M83ミサイルは共に大気圏内迎撃用です。
S-300V用の迎撃ミサイル9M82と9M83は末広がり型のブースターが特徴で、これは同じ冷戦期に開発されたABM(弾道弾迎撃ミサイル)の53T6にも見られる特徴です。円錐形に近く、ミサイル下部は直径がかなり太くなっています。
S-300V用の9M82ミサイルは非常に大きく、S-300P系の使用ミサイルの2~3倍もの重量があります。これは開発当時のS-300P系では弾道ミサイル迎撃の要求性能が達成困難だったので、全く別の迎撃ミサイルと管制システムを用意する必要があったためでした。
- ロシア軍広報「TVチャンネル・ズヴェズダ」よりS-300V4の北方領土への配備
- ロシア軍広報「TVチャンネル・ズヴェズダ」よりS-300V4試射の様子(ロシア本土)